マナーうんちく話453≪冬来りなば春遠からじ≫
前回、雛人形は婚礼の様子を表現しており、登場人物にはそれぞれ大切な役割が有るとお話ししましたが、今回は、いつ、どのように飾るかについて触れてみます。
三月三日の「雛祭り」は、このコラムで何度もお話ししていますように五節句(人日、上巳、端午、七夕、重陽)の一つ、上巳(じょうし)の節句、つまり「桃の節句」です。
そしてその起源は、春の訪れに「山の神様」「野の神様」「水の神様」に感謝する行事と、自分の穢れを紙で作った人形に移し、穢れを払う「流し雛」の風習等が合わさった行事で、とても複雑ないわれが有ります。
さらに、飾り方にも、明治に入り英国式のマナーが入って来たために大きな変化が起こり、加えて、高度成長期に入ってから豪華で派手になり、とても複雑になってきました。
従って、雛人形を飾る目的、飾る時期、飾り方も千差万別で、どれが正解とは一概には言えませんが、一応の目安を解説しておきますので参考にして下さい。
●雛人形を飾る目的
最近は飾らない人が増えているようですが、女の子が無事に育ってくれたことへの感謝と、良縁に恵まれることへの願いを込めて、出来る限り飾られたらいいと思います。
決して豪華な人形である必要はないですが、親が子供の幸せを祈っているという姿勢を見せることにより、親と子の絆を深める効果が期待できます。
●雛人形を飾る時期
立春を過ぎた大安吉日が良いとされています。
また、二十四節季の一つ「雨水」に飾れば「良縁に恵まれる」と言う言い伝えも有ります。今年(平成25年)は2月18日の月曜日ですから、17日の日曜日の友引の日に、子どもと一緒に飾られるのも良いかもしれませんね。いずれにせよ、3月3日の前の日の「一夜飾り」はお勧めできません。
●雛人形の飾り方
時代劇でも、あまり見慣れないシーンですが、日本では、昔から高貴な方が、人前で夫婦そろって並ぶ事は無かったようです。
庶民でさえ、人前で手をつないだり、腕を組んで歩いたりすることは有りえなかった時代に、夫婦そろって正々堂々と並ぶことができる唯一の世界が雛人形で有ったと思われます。
そして、当時は雛人形の男雛は向かって左側、女雛は右と決まっていたわけですが、明治維新と共に英国式のマナーが入ってきて、事情が急変します。
つまり英国式では、男性は向かって男性が右に、女性が左になるので、事はややこしくなってきたわけです。
つまり、あまり真面目に考えることは無いと言うことですね。
ちなみに、女の子が生まれて初めて迎えるひな祭りと、男の子が生まれて初めて迎える端午の節句を「初節句」といってお祝いします。
女児の初節句のお祝いの品を、妻の実家から送るしきたりは今でも見受けられますが、お雛様を送る場合は、住宅事情等も考慮して、希望を聞いてから贈られる事をお勧めします。
いずれにせよ、「雛祭り」は、「クリスマス」や「バレンタイン」などのように西洋から入ってきた行事ではなく、子どもを大切にしてきた日本に昔から伝わる、一年に一度の女の子のお祭りです。
女の子のいる家庭では、ちらしずしやハマグリの吸い物のご馳走で、祖父母などを招き、お祝いの席を設けられるのも良いものです。
招かれた方は、桃の花や菱餅や白酒やあられなどの縁起物の御供えを持参すると良いでしょう。勿論ケーキや人形なども良いと思います。
これが日本式の家族や親族の絆の深め方で、いつまでも、伝え、残したい大切にしたい日本のしきたりです。