マナーうんちく話509≪「女しぐさ」と「男しぐさ」≫
日本人は世界でも屈指の贈答文化を築いておりますが、モノを贈ったり、贈られたりする際に、独特な言い方が有ります。
相手を持ち上げ、自分を下げる、日本人ならではの大変美しい言い方ですが、互いに本来の意味を共有できていないのが実情ではないでしょうか?
勿体ない限りですね。
そこで、2回に渡り、特に頻繁に使用される言い方に触れてみたいと思います。
先ず「賞味」についてです。
「賞」には、賞品や賞金のように「褒美」としての意味と、称賛のように「褒め讃える」意味が有ります。
つまり、「賞味」とは、味を褒めると言う意味が強くなりますね。
従って、自分の作った料理やお菓子等を、他人に食べてもらう時に、「どうぞご賞味下さい」というと、「自分の作った料理や菓子を褒めながら食して下さい」と取られるかもしれませんので、この場合は、「お口に合うかどうか解りませんが、どうぞ召し上がってください」の言い方が良いかもしれませんね。
但し、企業等が製造した営業用の食べ物でしたら、「味自慢」「味一番」等と表現するように、自分の会社の商品は強気で宣伝しますので、「我が社のお菓子を是非賞味下さい」と言うのが妥当です。
「お口に合うかどうか」等と言ったら、売れる物も売れなくなります。
加えて、他人が作った料理やお菓子を頂いた側は、当然作った相手を褒めなければいけませんので、「美味しく頂きました」とか、「有り難く賞味させていただきました」等と言うようになります。
いずれにせよ、「褒め言葉」の使い方は、難しいですね。
また、品物をお贈りする時に、「どうぞご笑納下さい」と言いますが、これは、「つまらないモノですが、笑って受け取って下さい」というように、謙遜して言う時に使用します。
この時の「笑う」の意味は、楽しい笑いではなく、「失笑する」のようなニアンスです。
なお、「笑納下さい」だけでもいいですが、「ご笑納下さい」という言い方でもいいと思います。
さらに、ビジネスシーンなどでは、「ご査収下さい」と言う表現を使用します。
「査収」とは、「金銭や書類を充分調べてから受け取って下さい」と言う意味です。
メールやファックスなどでよく使用されますね。
便利の良い言葉だと思いますが、「査収」と言う意味を、発信する側と、受信する側が、キチンと共有できているか否かが問題です。
互いが、この意味をはき違えていたら、おかしくなる場合も有ります。
ご用心ください。
マナーの視点から言えば、便利の良い言葉より、具体的に、解り易く表現することをお勧めします。
例えば、メールで資料を添付した場合なら、「資料を添付いたしましたので、ご確認ください」とか、「お送りいたしました資料のご確認をよろしくお願いいたします」等です。
「賞味」も「笑納」も「査収」も、便利の良い格好いい言葉ですが、互いに意味を共有しているケースは少ないように思います。
「急がば回れ」と言われるように、なるべく具体的に丁寧に表現される事をお勧めします。
次回は、「つまらないものですが・・・。」という表現の本音を探ります。