まなーうんちく話798《月々に 月見る月は 多けれど・・・。》
「秋深き 隣はなにを する人ぞ」
晩秋の頃、松尾芭蕉が隣家の団らんに思いをはせた句ですが、皆様方は如何お過ごしでしょうか?
10月23日は二十四節季の一つ「霜降(そうこう)」です。
秋が深まり、そろそろ霜が降りる頃と言う意味です。
その年の秋から冬にかけて初めて降る霜を「初霜」と言いますが、岡山県でも県北と県南では大きな違いがあります。
いずれにせよ、都市部ではあまり実感が湧きませんが、中山間部では、山も川も街並みも、すっかり落ち着いた佇まいになり、「静かな里の秋」といった表現が似合う頃になりました。
静かな静かな 里の秋 お背度に木の実の 落ちる夜は
ああ母さんと ただ二人 栗の実煮てます いろりばた
あかるいあかるい 星の夜 鳴き鳴き夜鴨の わたる夜は
ああ父さんの あの笑顔 栗の実食べては 思い出す
さよならさよなら 椰子の島 おふねにゆられて 帰られる
ああ父さんよ ごぶじでと 今夜も母さんと 祈ります
斉藤信夫作詞 「里の秋」。
日本の小学校の教科書に長く採用されていたので、誰もが知っている、日本の秋の原風景をうたった童謡ですが、この歌の逸話をご存知でしょうか?
童謡や唱歌は、それなりのコンセプトの元、季節の風物を詠ったものが多いわけですが、秋を代表する歌は「紅葉」と「里の秋」ではないでしょうか。
日本は世界屈指の四季の美しい国ですが、中でも秋の紅葉は世界一美しいと言われており、その情景をうたった「紅葉」は、まさに日本の秋を代表する歌ですね。
ところで、この「里の秋」の曲ですが、一番は故郷の秋をお母さんと共に過ごしている様子が描かれており、二番は夜空の下でお母さんと一緒に遠くにいるお父さんのことを思っているシーンです。
いずれも平和で、のどかな日本の家庭の様子を、頭に描かれる人が多いのではと思います。
しかし、この歌の大きな存在感は、三番に有るようです。
三番は、お母さんと共に、お父さんの無事な帰りを願っている場面です。
問題は、なぜ無事な帰りを願っているのか?です。
お父さんが、仕事や旅行に行って、その無事な帰りをお母さんと待っているのではありません。
実は、お父さんは戦争に行っていたのです。
日本は、昭和20年に敗戦を迎えましたが、それに伴い、南方や大陸の各地から多くの軍人・軍属・民間人が日本に帰ります。
戦争に負けて帰るわけですから、全員、多かれ少なかれ、身体も心も傷ついています。
NHK連続テレビ小説「梅ちゃん先生」の初めの頃に、終戦当時の歴史的情景が多々ありましたが、そのシーンを参考にして頂ければと思います。
大変美しい旋律の「里の秋」は、改めて、平和の尊さや大切さを痛感する曲だと感じます。
そして、この曲を作詞した斉藤さんは、小学校の詞を書くことが大好きな先生でした。
次回は斉藤先生の素晴らしさに触れてみます。