マナーうんちく話521≪お心肥し≫
前回は「心付け」について触れましたが、今回は「チップ」と「サービス料」について解説します。
チップの起源は、迅速なサービスを保証する「To insure promptness」の頭文字です。
パブで「to insure promptness」と書かれた箱にお金を入れると「迅速なサービスが受けられた」とか、ホテルでベルボーイにお金を渡すと「順番に関係なく優先的に荷物を運んでもらえた」等というのが始まりだそうです。
日本のホテルでも、私がホテルに入りたての頃には、外国人のお客様からよく頂戴しました。但し、同じホテルでも、ベル係やレストラン・バー等のチップを頻繁に頂けるセクションとそうでないセクションがあります。
私は当時、レストランやバーの仕事に携わっていましたので、チップの恩恵を多々受けることができました。
バーでは小瓶のビールを一本飲んで頂くごとに1ドルのチップを頂き、コーヒーのルームサービスでも1ドルのチップを頂けるのが、とてもうれしく、英会話をしっかり勉強したものです。
勿論お金を頂くのもさることながら、満身の笑顔に「サンキューの言葉」を添えて頂くチップに、欧米諸国の素晴らしい文化が感じ取れました。
それ以来、買い物などをしてお金を支払う時には、いつも「ありがとうの言葉」を添えて支払いを済ませることにしています。
皆様にも是非お勧めします。
ちなみに、当時のホテルの利用客は、外国人の旅行者と比較的お金持ちの人が多いかったので、チップに有り付けたわけですが、ホテルが次第に一般に普及するにつれ、このチップの習慣は薄れて行きました。
つまり、日本では一般のお客様にチップを強要することが難しかったのが、定着しなかった理由です。
但し、前回触れました、旅館や結婚式などで、感謝の気持ちとして、お客様が自発的に、お金や金品を渡す「心付け」の習慣は現在でもあります。
「チップ」と「心付け」の明確な違いは有りませんが、「心付け」は、基本的にはお金を裸では渡しません。
「お礼」「御祝儀」等と渡す目的を簡潔に書いて、懐紙や祝儀袋やぽち袋に入れて相手に直接渡すのがマナーです。
そして、チップは、お客様に強制できないことや、セクションにより頂けるセクションとそうでないセクションがあり、不公平が生じるので、やがて、チップを定額化し、ゲストに請求する「サービス料」制度ができたわけです。
すなわち、個人の収入になったチップは、会社側の収入になる「サービス料」制度へと移行したわけですね。
また、サービス料は10%が多いようですが、明確な基準は無いようです。
そして、ホテルや旅館では「サービス料」を頂いた上に、さらに「心付け」まで頂くことがあります。
お客様の負担を考えると、頂く方も、それなりのプレッシャーがかかりますので気が引き締まります。勿論、頂かなくても手を抜くようなことはまずありません。
それなら、いっそ心付けは廃止したら?と思われるかもしれませんが、これが理屈では上手に説明できない何かがあるわけです。但し、頂かない事業所もあります。
サービス料はなにがしかの対価として一方的に頂くものですが、心付けは自主性によるもので、基本的に発想が異なります。「感謝の気持ち」や、喜び事・祝い事を手伝ってくれた「おすそわけ」として頂く、日本独特の風習だと私は思っていますが、皆さまは如何でしょうか?