マナーうんちく話453≪冬来りなば春遠からじ≫
ご先祖様をお迎えし、ご馳走を召し上がって頂き、盆踊りや花火でお楽しみいただいたら、またあの世にお帰り頂くわけですが、お迎えの時と同様に、丁寧にお見送りをしなければいけません。
15日及び16日が中心になります。
前回、無縁仏の霊は、盆踊りと共にお見送りすると申しましたが、ご先祖様の霊も、気持ち良くあの世にお帰り頂くようにしなければいけないわけです。
そこで昔の人達は、いかにして満足にお帰り頂くか、色々と創意工夫を凝らしたわけですが、これが現在のマナーの原点だと感じます。
そして、その創意工夫の結果は、現在の私たちに、情緒豊かに受け継がれています。
「お正月」には、「門松」を立ててご先祖様をお迎えし、「とんど焼き」の煙と共にお帰り頂きますが、「お盆」は「迎え火」を焚いてお迎えし、「送り火」を焚いてお見送りをします。
「迎え火」や「送り火」は、お盆を代表する「火の行事」ですが、村や地域の共同事業として大々的に行われる行事と、各々の家ごとに行われる行事があり、いずれも全国津々浦々存在します。送り盆の共同体事業としては、京都の「大文字焼き」が特に有名ですね。
家ごとに行う送り火は、家の玄関や墓地、あるいは川辺等と多様な場所で行われますが、その家のご先祖様を、家族全員でお見送りする意味の有る行事です。
だから、家族の「絆」が深まるわけです。
さらに「精霊送り」もあります。
精霊棚にお供えしていた様々な供物を、お土産として、小さな船に乗せてあの世に送りかえす行事です。
灯籠(とうろう)だけを流す「灯籠流し」も有ります。
昔は、川や海に流すのが一般的でしたが、今は環境汚染につながるとされ、あまり見かけなくなり、寂しくなりました。
「灯籠流し」や「精霊送り」の行事は、後で纏めて回収すれば汚染は防げますが、「原発事故」での汚染はひどい話しですね。
放射能の汚染で故郷を追われ、故郷でお盆を迎えることができないとなれば、誠にゆゆしきことです。ご先祖様たちは、この現状をどのように思われているのか?想像に絶するものがあります。正月もしかりです。
8月15日は、終戦記念日ですが、日本は明治維新後、多くの戦争を経験し、やがて第二次世界大戦に敗れ、大変悲惨な目に会いました。67年前の出来事です。そして復興を遂げるわけですが、この過程において価値観が大きく異なりました。
特に、大戦の敵国であり、勝利をおさめたアメリカの影響を多く受け、生活スタイルや考え方が様変わりしたわけですね。
確かに、「民主主義」や「市場原理」や「合理性」の追求で豊かになった面も多々ありましたが、それと共に、先人達が築き育んできた伝統文化が、古臭い風習として、その価値が下がった感が歪めません。
そして、日本が世界に誇る「和する心」や「礼儀作法」が影を薄めてきました。
なにもかも、商業ペースに則っとり、今流に全てを変えるのではなく、伝統行事の先人たちの思いや、本来の意味を正しく理解したうえで、次世代に伝えていきたいものです。
お盆や正月にご先祖様が里帰りされる理由は、子孫がどのような暮らしをしているか?その様子を見に帰られるわけです。
だったら、貧しくとも、生き生きと、幸せに暮らしている姿を見て頂きたいですね。