まなーうんちく話798《月々に 月見る月は 多けれど・・・。》
お盆に帰省され、「盆踊り」を楽しみにされている人も多いと思います。
盆踊りは、現在ではすっかり宗教色は薄れ、夏祭りの大きなイベントの一つとして定着し、かなり様子も変わってきましたが、本来は、盆の間、先祖の霊を供養するための宗教行事だったようです。
また、一般庶民の「民俗芸能的要素」も強いですが、幕府の「まつりごと」のように公式記録ではなく、多くの人々の目・口・耳・立ち居・振る舞い等を通じ、断片的に今に伝えられたために、多くの謎を含んでいることも確かです。
歴史的には、「盂蘭盆」の行事と「念仏踊り」が合体し、既にお話ししたように、ご先祖様を供養するための行事になり、やがて一般大衆の夏を彩る一大娯楽として定着したようです。
現在でも盆踊りは各地で盛大に開催されますが、昔は、旧暦の7月15日に夜を徹して行われたそうです。
ちなみに、旧暦の7月15日は「満月」で、お月さまが最も美しいとされた日です。
現代のように娯楽と言えるものが極端に少なかった時代です。
夜を徹しての唯一の娯楽である盆踊りは、当時の若い男女にとって、最高の交流の場であったのでしょうね。
勿論「婚活」などという概念はなかったものの、「出会いの場」であり、「カップル誕生の場」で有ったかもしれませんね。
ところで、前回、「お盆」と「お正月」にはご先祖の霊をお迎えし、楽しい一時を過ごすと申しましたが、お盆に里帰りする霊は色々存在します。
まだ亡くなられたばかりの霊もその一つですが、この霊は、現世の執着が強いので特に念入りに供養します。亡くなってから初めて迎える盆は「新盆(にいぼん・しんぼん・あらぼん)」とか「初盆(はつぼん)」といい、白い提灯を飾ります。
そして、お盆に迎える霊には、無縁仏と言われる身寄りのない霊も存在します。
特にこの霊は、粗末な扱いをすると、たたりがあると思われていたため、丁寧に扱わなくてはいけません。
そこで、盆踊りが功を奏するわけです。
霊と共に楽しく踊り、村の外れまでやってきて、そこから霊を送るわけですね。
盆踊りが、村の主会場で行われた後、初盆を迎えた家や、村はずれで踊ったりするのは、このような理由があるとされています。
今の盆踊りは電子機器を使用した楽器で威勢よく行われていますが、昔から存在する伝統的な盆踊りには、なんとなく哀愁が漂う気がしませんか?
日本は世界屈指の礼儀・作法の行き届いた国です。
「礼儀・作法」とは、思いやりや感謝の心を抱き、それを具体的に言葉や態度等で表現することです。
お盆やお正月に、祖先に対し、改めて感謝の心を捧げ、そして丁寧におもてなしをする、まさに諸外国には見慣れない、礼儀・作法の根源をなすものです。
競争に勝つことばかりに価値観を置くのではなく、こんな素晴らしい伝統文化の神髄をキチンと理解し、積極的に世界に向けて発信したらいいですね。