まなーうんちく話798《月々に 月見る月は 多けれど・・・。》
前回は扇子(せんす)のお話をいたしましたが、「団扇(うちわ)」も夏の風物詩として、しっかり存在感を保っていますね。
只今、夏のイベントが目白押しの季節ですが、浴衣の帯の後ろに、さりげなくさされた団扇には、風流が漂い、夏祭りのムードを高めてくれます。
現在では、団扇は、扇子に比較して、どちらかと言えばカジュアル感がありますが、本来の意味は若干異なります。
風を扇ぐ(あおぐ)扇子に比べ、団扇は、蝿や蚊、あるいは病魔を打ち払うためのもので、その歴史は扇子よりはるかに古く、紀元前に中国で生まれたとされております。
日本には6世紀頃伝わっていますが、当時は病魔を払うとともに、天皇や貴族などの高貴な方が、威厳を示すために、顔を隠すための道具としても使用されていました。
そして、江戸時代になって庶民に普及して、暑い時期に涼を取ったり、風を起こす道具として使用されたようです。さらに、団扇に浮世絵などを描き、見て楽しむ使い方が加味され、高名な絵師の描いた芸術的価値が高いものも誕生しました。
このように、明治から昭和30年頃までは、風をおこしたり、涼をとったりする実用性の高いモノでしたが、これ以後、次第に使用方法が変化してきます。
すなわち、昭和30年以降になり、扇風機やクーラー、さらにガスや電化製品の普及で実用的価値が減少し現在に至っています。
さて、団扇の使い方のマナーですが、ポイントは扇子と同様、胸の位置での使用がお勧めです。
人前での使用は、厳格な決め事はありませんが、その人との関係性がポイントになります。
友人の場合はOKでも、目上の人の前では宜しくないと思います。
ちなみに、「団扇」や「扇子」の数え方ですが、団扇は「枚」「本」で、扇子は閉じた状態なら「本」、開いた状態なら「枚」とか「面」になります。
時代と共に、夏の涼の取り方も大きく変わってきましたが、団扇は夏の風物詩として、身に付ける人のセンスが光る小物としての存在感があります。
扇子と同様、しとやかに、優雅に使用したいものです。
ところで、優雅で何不自由しない暮らしのことを「左うちわ」と言いますが、なぜ、右ではなく、左なのかご存知でしょうか?
殆どの人は右利きですから、団扇で仰ぐ時にも当然利き腕の右手を使用し、効率よく使用するわけですが、その必要が無い場合は、あえて利き腕の右手でなくて、左手でもいいわけです。
つまり、あくせく働かなくても良い、ゆとりのある暮らしのことを、左うちわと呼ぶようになったわけです。
皆さんは、右手or左手、どちらでしょうか?