マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
質問 今日も朝から雨がしとしと降っています。雨が続くと、何を着て行こうか?と迷います。仕事は室内での事務ですが、ユニフォームは無く、皆な私服です。こんな時、貴方はどのような服装で出勤しますか?
勿論、どんなファッションで出勤するかは自由です。ただ、マナーの観点からすれば、雨降りが続けば、誰しも気が重くなりがちです。だから皆の気分が少しでも晴れるように、明るめのファッションで思い切りのお洒落がお勧めです。
自分も前向きになれるし、他者にも好感を与えます。
6月10日は暦の上では「入梅」です。
つまり、梅雨の時期ですよ!という意味で、昔は農事の参考にしていました。
例えば、梅雨の時期は雨に恵まれますが、梅雨が終われば本格的な夏になり、逆に水不足に陥ります。この時に備え、しっかり農業用水などを貯めておくことが必要だったわけです。
ちなみに、「入梅」は、あくまで「梅雨の頃ですよ!」という意味で、「梅雨に入った状態」ではありません。
すなわち、季節の移り変わりを把握するために作られた「雑節」の一つで、このコラムでも取り上げた、「八十八夜」とか「節分」等と同じです。
そして、梅雨に入ったら気象用語で、「梅雨入り」と表現します。
「入梅」は予め日が決まっていますが、「梅雨入り」はその時になってみないと解りません。「晴れの国」岡山の今年の梅雨入りは、入梅より2日早い6月18日でした。
日本では、毎年のように6月から7月にかけて、梅雨を迎えますが、雨ばかりではなく、湿度も高くなるので蒸し暑さを感じ、殆どの人は不快感を示します。
しかし、一方では、このような天気とも仲良くやって行こう!と、先人たちも色々と創意工夫を凝らしています。
例えば、自由自在に取り外しのできる襖や障子、夏は涼しく冬は暖かい土壁、イ草やワラから作る畳やご座、着物の生地等など。
ところで、このコラムで、いつも、日本は「四季」の美しい国だと申していますが、それに梅雨時の「雨季」を加えると、「五季」になるかもしれませんね。
多分、このように感じられている人の方が多いのではないでしょうか?
北海道にも梅雨が存在すれば、文句なしに「五季」と表現しても良いと思いますが、如何思われますか?
それにしても、梅雨時は、「うっとうしい季節」とか、「嫌な雨」とかで、梅雨のイメージは決して良くないですが、よく考えてみると、この梅雨時の雨は、実に多くの動植物や人間に恩恵を与えています。
まさに「天からの恵み」だと思います。
飲み水を始め工業用水等も全て梅雨のお陰です。また、前回お話しした、日本の稲作もしかりです。
勿論、恵みの雨も量によりますが。少な過ぎても、多すぎても良くないので、程々に降ってほしいモノですね。
いずれ科学の力で、降る雨の量をコントロールする時が来るかもしれませんね。
そして、改めて、「四季」が有って、「梅雨」が有ることに感謝です。
「梅雨」とは、梅の実が実る頃に降る雨ですから「梅雨」と言いますが、春の菜の花が咲く頃に降る長雨は「菜種梅雨」と言います。
降る雨に、季節に相応しい素敵なネーミングを付けるのは、感性の豊かな日本人の得意とするところですが、なぜ「梅」「雨」と書いて、「ツ」「ユ」と読むのかは、私にはよく解りません。皆様は如何でしょうか?
それだけ、先人たちは生活の中に「梅」を意識したのでしょうか?
今年の梅雨は、「梅雨=不快・不要」ではなく、「梅雨=快・必要」という視点で、蛍やアジサイを見たり、思い切り明るいファッションを試みたり、「傘かしげ」のマナーを発揮したりで、前向きに捉えられては如何でしょうか?
但し、「梅雨=黴雨」でカビの多い季節でもあります。食中毒にご用心下さい。