マナーうんちく話207≪メールと対話≫

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:人間関係を良好にするマナー

最近、自ら進んで相手とコミュニケーションを取る人が少なくなってきた感じがします。

「18歳から34歳までの未婚者で、交際をしている異性がいない人が、男性は60パーセント超え、女性は50%いる」「離婚は増加したけど結婚は難しくなった」「苦労して就職した職場を早期に退職する人急増した」「家出と自殺者が相変わらず多い」、加えて「孤独死」「無縁社会」「無縁仏」など、先進国として恥ずかしい現象が、日本人のコミュニケーションの欠如を明確に裏付けています。

由々しき事態だと思います。

コミュニケーション手段はひと昔に比べると雲泥の差が有ります。
また大学・大学院等でのコミュニケーションに関する専門教育も大変充実してきています。
「ビジネスコミュニケーション」「人間コミュニケーション」「国際コミュニケーション」「情報コミュニケーション」「異文化コミュニケーション」「メディアコミュニケーション」等など・・・。挙げればきりがないほどです。またアメリカ等からコミュニケーションに関する学問がどんどん入ってきており、それに関する資格等も多く見受けられます。
しかし、「礼儀作法学科」とか「マナー研究学科」等は見当たりません。

コミュニケーションツールや手法は大変充実しているが、コミュニケーション不足による深刻な課題はむしろ増加傾向にある、という大変矛盾した世の中のようです。

今の日本では、余程の特殊技能や能力が無い限り、誰とも仲良くしないで生活することは困難です。そして、仲良くなるためには、直接向かい合って「対話」を重ねることが必要不可欠だと感じます。

しかし、面と向かって話をするのは、苦手で、面倒くさいので、メールという手段に重きをかけている人が増加しているように思います。
勿論、ケースバイケースでいいと思いますが、メールの依存度が高くなればなるほど、直接向かい合って対話をする機会が少なくなります。
ここに、先の矛盾の原因が有るような気がしてなりません。

確かに、メールはいつでもどこでもやり取り可能で、かつ、利便性や情報収縮能力は図り切れない位優秀ですが、反面、感情は有りません。

同じ意思を伝えあうにしても、直接会って表情や態度を交えて、話をしたり、聞いたりするのと、機械的にするのでは大きな違いが有ります。

人と人とが直接会って言葉を交わし合うためには、時間や場所もきめなければいけないし、表情・態度・声の調子等にも注意しなければなりません。場合によっては嫌な思いをしなければならないし、下げたくない頭も下げなくてはいけません。
口下手の人は、言いたいことの半分くらいしか言えないこともあります。

その点メールなら、都合のよい時間に、何も気兼ねなくできるし、必要なことにプラスアルファーの事も言えます。口下手の人や多忙の人には、この上なくありがたい手段です。

しかし、それでは心と心は充分通い合いません。
無味乾燥に陥る可能性もあります。

相手に対する、「思いやり」「感謝」「敬意」は、口元から発せられる言葉もさることながら、身ぶり手ぶりの表情や態度にも大きく現れます。
直接向かい合い、対話が必要です。

最近、人間関係がうまくいかず、大きなストレスを抱えている人が多いようです。
会議をしても、上手にまとまらないという声もよく聞きます。

利便性を追求することは大切ですが、それに慣れ過ぎて楽になればなるほど、人間関係はおろそかになって来ると思います。

何もかもメールに頼るのではなく、対面してきちんと話す大切さを再認識したいものです。
電話で直接、相手の声を聴くだけでも大きく異なります。

「相手の言うことを、目を見てキチンと聴くこと」「口で思うように言えない部分は、身ぶり・手ぶりを働かせ、熱意を持って伝えること」。このような「対話」が人間関係を築く基礎になるわけです。

「対話」が出来ない人が、それよりレベルの高い「会議」をして、上手にまとまるとはとても思えません。

欧米から入って来た「コミュニケーション」という言葉を、昔から日本に存在していた「おもいやり」「対話」という言葉に置き換えてみれば、今の日本での、家庭における躾、学校における教育の在り方にも、大きな問題が有りそうに思えてなりません。


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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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