マナーうんちく話535≪五風十雨≫
今年はとても厳しい冬だったような気がしますが如何でしょうか?
常識外れの降雪のせいで、日常生活が脅かされ、被害が多発しています。
豪雪地方の方々におかれましては、くれぐれもご自愛いただきたいと思います。
そして、寒さが厳しければ、厳しいほど、本格的な春が待ち遠しいものです。
その春が来た事を真っ先に告げてくれる代表的な花木は、なんといっても「梅」ですね。
今回は、厳しい寒さを見事乗り越え、百花に先駆けて、気高い香りと共に、凛として、それでいてけなげに咲く梅の花に再度触れてみたいと思います。
梅が日本人にとって、いかになじみの深い木であったかということは、梅にまつわる歌・俳句・諺・言い伝え等の多さで、容易に察しがつきます。
《マナーうんちく話200》において、菅原道真が都落ちする時に読んだ、「東風吹かば においおこせよ梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ」という歌をご紹介しましたが、それに匹敵する位有名で、この時期にマッチした俳句があります。
「梅一輪 一輪ほどの 暖かさ」
ご存知の方も多いと思いますが、松尾芭蕉の高弟であった服部嵐雪(はっとりらんせつ)が詠んだ俳句です。
梅の花が一輪、そしてまた一輪と咲くにつれ、気温も、少しずつ少しずつ、暖かくなるという意味です。
当然、この俳句が詠まれた頃は、今のストーブやエアコンのように便利で効率の良い暖房手段は無く、とても厳しい寒さにひたすら耐えていたので、梅の蕾がほころび、やがて花が咲き始めると、これでやっと厳しい寒さから解放されるという期待感で、梅の花が徐々に咲きほころぶのを、待ちわびた情景だと思います。
首を長くして待ちわびた春が、「もうすぐそこにきたよ!」ということが、実感できるようですね。
人々が心持ちにしている春に先駆け、凛として咲き、気高く香り、さらに実っては薬や食品として重宝される梅ですが、贅沢に温室育ちというわけにはまいりません。
厳しい寒さに耐えてこそ、本来の梅としての効能を発揮します。
「相手に対し好感を与えること」は、マナーの根源をなすものですが、そのためには自分磨きに励まなければいけません。特に精神修養はとても大事です。
梅が厳寒に耐えて、人々に好感を与えてくれるように、素敵なマナーを発揮するには、形ばかりにこだわるより、多くの苦労を味わい精神を鍛えることと共に、学問を深めることが何より大事です。
「梅に鶯」とか、「梅と桜を両手に持つ」という言葉が有ります。
「調和がとれている」とか、「良いことに更に良いことが加わる」という意味です。
本当に素敵な人とは、「賢く」、かつ「思いやりのある人」の事ではないでしょうか?
長かったバレンタイン商戦も静まって来たら、今が旬の梅の花に、思いをはせてみられたら如何でしょうか?
一輪だけでもいいから、梅の花が咲いている所に出向き、「心穏やかなひと時を過ごすだけのゆとり」は、日本人として大切にしていきたいものです。