マナーうんちく話604≪武士は食わねど高楊枝≫
2月は、一年で最も寒い時期だから、着物を更に着なければならないので、「着更着(きさらぎ)」と表現しますが、それを裏付けるような寒さになりました。
雪に見舞われる地域も多々あると思いますが、スリップ事故にはくれぐれもご用心ください。
ところで、個人宅や職場等を訪問して、応接間や座敷に通され、コーヒーにケーキ、あるいは日本茶や和菓子等を出された場合、どのように振舞ったらよいのか?自信ありますか。
私は長い間、ホテルのレストランや宴会において、料理や飲み物を通じ、おもてなしをする立場にありましたが、食べ方、飲み方にはその人の「人となり」が見事に反映されます。
今回は、品の良い茶菓の召し上がり方についての解説です。
食べ物や飲み物を、サービスしたり、されたりする時には、大切な基本が有ります。
「温かいものは温かいうちに、冷たいものは冷たいうちに」ということです。
この基本は、「サービスする側」は、温かいものは温かい状態のまま美味しく頂いてほしいという気持ちが有り、「サービスを受ける側」は、折角の気持ちを無駄にしないよう、気持ち良く受けると言うことです。
従って、お茶やお菓子を出されたら、遠慮しないで直ぐに、飲んだり食べたりすることをお勧めします。ここでは遠慮しないのがマナーです。
その際、「ありがとうございます」「頂きます」の言葉をぜひ添えて下さい。
どちらかの言葉ではなく、両方の言葉が望ましいですね。ここがポイントです。
「ありがとうございます」「恐縮です」「恐れ入ります」等と発する人は多いのですが、それに、「頂きます」の言葉を添える人は、大人でも少ないような気がします。
大人が言えなかったら、子どもも言えません。
また、飲み物の好みを聞かれた場合は、お言葉に甘えて、好みの飲み物をリクエストして下さい。「なんでもいいです」等の返事は、出す側も困ります・
そして、好のみを聞かれたら、先ず、「好のみを聞いて頂いたことへの感謝の言葉」を発して下さい。次に好み飲み物をリクエストします。
例えば、「お飲み物は、日本茶、コーヒー、紅茶がございますが、どちらがよろしいですか?」と聴かれたら、「ありがとうございます」、「それではお言葉に甘えましてコーヒーをお願いいたします」と答えます。この「ありがとうございます」の一言に、その人の品格が反映されます。
少し余談事になりますが、レストランでランチをされた時、係の人から「このランチには食後にコーヒーか紅茶が付きますが、どちらがよろしいですか?」と尋ねられた時、「私、コーヒー」とか「じゃぁ、紅茶」等と答える人がいますが、これは感心しません。
「私、コーヒー」とか、「じゃぁ、紅茶」と答えられたら、これは会話ではないです。
「私」「コーヒー」等の単語を並べただけです。
「コーヒーでお願いします」とか、「紅茶にして下さい」と答えて下さい。
また、よくある質問ですが、例えばAさんが、大事な取引先の○□会社のBさんを訪ねて行きました。そして応接間に通された時、Aさんにコーヒーが一つだけ出されました。
Aさんの立場として、このコーヒーを飲んでも良いのか?飲まない方がいいのか?また飲むとしても、直ぐに飲んでいいのか?Bさんが来てから飲むのか?ということですが、この場合は、「どうぞコーヒーでも飲みながらBが来るまでお待ちください」という○□会社の好意ですから、先ほどの基本のように、コーヒーを出されたら、「ありがとうございます」「いただきます」と言って飲みます。
コーヒーを出す側も、「どうぞコーヒーでも飲みながらお待ちください」の一言を添えていただければありがたいですね。
但し、コーヒーが2つ運ばれてきたら、「コーヒーが冷めないうちにBが参ります」と言うことですから、Bさんが来てから一緒に飲みます。
日本茶にせよ、コーヒーや紅茶にせよ、世界中のすべての民族には、それなりのおもてなしの為の飲み物の文化が存在します。特に日本では「茶道」という素晴らしい文化が有ります。単に喉を潤すばかりでなく、お茶を通じ、心と心を通い逢わす文化です。
前回お話しした、座布団や畳の文化等と非常に密接な関連が有ります。共に、いつまでも大切にしたいですね。