マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
【冠婚葬祭の知識とマナー10】 季節の行事・中秋の名月とお月見ロマン
9月(夜長月)の夜は、楽しいイベントの目白押しです。
9日の「重陽の節句」に引き続き、12日は旧暦の8月15日で、「十五夜」です。
中国では、旧暦の7月を「初秋」、8月を「仲秋」、9月を「晩秋」と名付け、それぞれの月の満月の日には、「月見の宴」を催していました。
中でも旧暦の8月の満月は、最も美しいとされ、盛大な宴が繰り広げられていたようです。
そしてその習慣が平安時代に日本に伝わり、貴族階級の間で広まった次第です。
日本の貴族階級は風流が好きで、宮中で、月を愛で、詩歌を詠み、宴を催していたと伝えられています。そして江戸時代になった頃に、単に月を愛でるだけではなく、作物の収穫に感謝し、季節の農作物や果物は花等をお供えして、美しい満月を祭る行事になりました。
現在と違い、月の満ち欠けを農作業の目安にしていた当時は、満月は豊穣を意味し、この上ないありがたい日だったのではないでしょうか?
月へのお供え物は、秋の七草が一般的ですが、中でもススキは欠かせません。農作物としては主に里芋が供えられていたので、十五夜は「芋名月」とも呼ばれます。勿論、団子もぜひ備えたいものです。
供え方を説明いたします。
・縁側(窓辺)や庭に小さな机を置き、「月見の台」を用意します。
・花瓶に、秋の七草(すすき、萩、ききょう、くず、おみなえし、なでしこ、ふじばかま)など、「すすき」を中心とした季節の花を飾ります。
・三方にお月見団子を載せます。
・里芋、枝豆、栗、ブドウなどを供えます。
ちなみに、三方(さんぼう)とは、神道の神事に使用される、お供え用の台のことです。平皿でも代用可能です。
大体以上ですが、感性を生かした自分流のコーディネートもお勧めです。
ここで、折角の機会ですので、お月見をさらに詳しく触れて行きたいと思います。
お供えする花がなぜ「すすき」か?ご存知でしょうか?
正月の準備に必要な「お飾り」や「鏡餅」はコメに関連していると、すでにお話ししましたがそれとよく似ています。
すなわち、イネ科のススキはコメに似ているので、ススキを米に見立て、それをお供えすることで、豊作を祈念したという説が有力です。こうなると団子も小麦粉製でなく、米粉で作った団子が良さそうですね。
ところで、その団子の数ですが、15夜には15個、13夜には13個供えます。
40年以上前にアポロが月面着陸に成功し、もはや月は手の届く範囲になり、かぐや姫や兎のロマンはすっかり失せてしまった感が有ります。それに伴い、年中行事も無用の産物になりがちです。しかし科学は確かに生活を豊かにし、便利にしてくれますが万能ではありません。自然に対し謙虚な態度も必要です。原発事故がそれを物語っています。
日本人が長い間大切にしてきた年中行事は、科学に反するものではなく、科学と共に歩むべきだと考えております。私は脱原発派ですが、その原点は「お月見」にも、かいま見ることができそうです。遠い昔から脈々と続いている日本人のたしなみを、形は変われども、次世代に伝えて行くことも大切なことではないでしょうか?