マナーうんちく話535≪五風十雨≫
マナーうんちく話31《日本人とお正月》
本来正月とは1月の別名ですが、元旦から1月3日まで、または松の内(門松の有る期間)を正月と称することが多いようです。このコラムの「年末年始シリーズ」の最初に、年末・年始は「人と人との絆を深める時」だとお話ししましたが、そのことは1月の別の呼び方にも表れています。1月は「睦月」と呼ばれますが、これは老若男女が互いに行き来して仲睦まじく暮らすという意味です。おせち料理の結びコンニャクは「むつみあう」意です。
聖徳太子は17条の憲法の冒頭において「和をもって貴しとなす!」と説きました。
稲作のための「田んぼ」は一人では作れないし、また維持できません。皆で助け合って仲良くすることが大前提です。ここが「小麦文化」の国とは基本的に違います。
ということで、「和する」「睦つむ」ことを再認識いただき、兎年は皆で仲良くいいスタートを切って頂ければ嬉しい限りです。
そして正月は特に「神様」を意識する時なのです。
それでは「正月行事のあれこれ」についてふれてみます。
本来正月の行事は、年神様をお迎えして共に新年をお祝いし、多くの幸せを授かるために生まれたものです。由来をしっかりご理解いただければ、来年の正月がさらに心豊かな気持ちで迎えられると思います。
元旦
一年の中で1月1日だけを限っていいます。
初日の出
年神様は日の出と共に来られるので、日の出が良く見える場所に出向いて、一年の最初の日の出を拝みます。よく「ご来光」といいますが、山頂で迎える日の出のことです。
おせち料理
本来は季節の節目、節目(節句)に神様にお供えする料理です。四季の美しい日本ならではの発想ですね。正月に「かまどの神様」に休んでいただくために、保存がきく料理が多いのと、家族の健康と繁栄を祈念する縁起物が多いのが特徴です。重箱に重ねてあるのは、幸が重なるようにとの願いからです。かまどは鍋や釜をかけて、煮炊きする炊事用設備です。
最近はホテルやデパートの豪華なおせち料理が人気ですが、時間があれば食材の由来など頭に描きながら手作りされて見るのもお勧めです。
かずのこ⇒子孫繁栄 黒豆⇒健康 田づくり⇒豊作 里芋⇒子宝 昆布巻き⇒喜ぶ
海老⇒長寿 ごぼう⇒根を下ろす等の意味があります。
お屠蘇
新しい年を健康で過ごすための薬酒。屠蘇の「屠」は邪気を払う意味で、「蘇」は身体をよみがえさせる意味です。もともと病気の予防と厄除けの願いが込められており重宝されていました。日本では宮中からスタートしているようです。
市販の「屠蘇散」を、大晦日に清酒に浸し、元旦に取り出して飲めばいいです。
「お屠蘇独特のマナー」は年少者から飲みます。年長者(家長)が注いで下さいね。ほんの少しだけでOK。皆健康で過ごせるように祈願し、挨拶を交わしながら飲んで下さい。
雑煮
元々、年神様にお供えしたお餅でつくった御利益をいただくために若水で煮て皆で食したのが始まりです。土地や家々により材料、調理法は千差万別です。
若水
今では水道の栓をひねったら水が出ますが、昔は生活水を井戸や谷川等に汲みにいっていました。元旦の朝に初めて汲む水を「若水(わかみず)」といいます。
お年玉
年神様にお供えしたお餅を、皆でわけ御利益にあずかるわけですが、年長者や主人に当たる人が代表していただき、そのいただいたものを使用人や家族に分けたのが始まりです。その丸い餅を「年玉」と呼んだので、それが現在のお年玉になりました。上位者(目上)から下位者(目下)に金品を贈るのがマナーですね。
祝い箸
祝い膳を頂く時に使用する箸を「祝い箸」と言いますが、本来は、正月に年神様をお迎えして共に祝い、一年の恩恵を授かるために、年神様と共に食べる時に使用します。両方が細くなっているので、片方を神様が、もう片方を人が使用する「神人共食箸」です。おせち料理やお雑煮を神様とこの箸で一緒に食べるわけですね。柳の木で作られています。
柳は成長が著しく、丈夫なので縁起を担いでいます。「家内喜(やなき)」と書く時もあります。中ほどが太くなっていますが、この理由は五穀豊穣を祈念した米俵を表しているからです。子孫繁栄を祈念して「はらみ箸」と呼ばれることもあります。
ひっくり返してとり箸としては使用しないでください。手作りの水引なんかつけてもいいかも・・・。家長が、祝い箸に家族の名前を書き、大晦日に神棚にお供えして、元旦に使用するのがマナーです。ぜひ試してみて下さい。皆さんにも由来を教えてあげて下さい。
※この続きは次回になります。