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現在の臨床心理士指定大学院・公認心理師養成大学院の選び方
臨床心理士と公認心理師。心理専門職を目指す上で、どちらの資格を取得するか、あるいは両方を目指すのかは、大学院選びの重要な出発点となります。今回は、2025年における最新の情報を踏まえ、将来のキャリアを見据えた大学院選びのポイントを解説します。
臨床心理士指定大学院とは:実践重視の学びの場
臨床心理士指定大学院は、臨床心理士資格の取得に必要な専門知識と技能を習得するための教育機関です。通常の大学院と比較して、実習をはじめとする実践的な訓練が豊富に組み込まれている点が大きな特徴です。大学院ごとに実習の内容や重点の置き方に特色があり、その大学のオリジナリティが色濃く反映されます。
実際に、私の知る医師や企業の人に聞いても、日本の心理士養成システムは素晴らしいとの評価をよく言われます。
学部生の方にとっては、卒業論文の作成などで多忙な時期と重なり、大学院の情報収集が後回しになりがちです。しかし、自身の将来を左右する重要な選択となるため、早い段階から情報収集を丁寧に行うことが強く推奨されます。
入学後の失敗を減らすための視点:教員の「学生への関心度」
大学院選びにおいて重要なのは、単に合格することではなく、入学後の学びが充実し、自身の成長につながる環境を選ぶことです。残念ながら、一部の大学院では、この現代社会であるにも関わらず、学生への指導が十分に行われず、雑務ばかりを強いられたり、研究指導で一方的な批判のみを受け、建設的なアドバイスが得られなかったりするケースも耳にします。
このような状況を避けるためには、「教員の学生への関心度」を見極めることが極めて重要です。学生一人ひとりの状況を把握し、成長を支援しようとする姿勢を持つ教員がいる大学院を選ぶことが、入学後の満足度を高める鍵となります。
先生によっては、指導外の学生の状況も把握し、将来を見据えた育成ビジョンを持っています。そういった大学院は、学生にとって心強い存在となるでしょう。学生の抱える問題を頭ごなしに否定するのではなく、受け止め、共に解決策を探し、成長を促してくれるような教員との出会いは、大学院生活を実りあるものに変えてくれます。
公認心理師法が施行され、各大学院では公認心理師養成カリキュラムの整備が進んでいます。2025年現在、私たちが注視すべきは、各大学の公認心理師養成への取り組み姿勢です。
一部の大学では、現役の学部生からの問い合わせに対し、十分な情報提供を行わず、「自己責任」を強調するような対応が見られることもあります。学生にとっては自身の将来に関わる重要な問題です。一方で、立命館大学や帝塚山大学のように、公認心理師養成に真摯に取り組み、学生からの質問にも丁寧に答えてくれる大学もあります。現時点では、公認心理師に関する科目が確定していない状況であるため、科目への対応だけでなく、実習に関する質問にどれだけ誠実に答えてくれるかが、大学の真剣度を見極めるポイントとなります。
現時点での各大学の動向としては、以下の点が挙げられます。
「公認心理師学部、学科」を新たに設置する臨床心理士指定大学院は少ない。
臨床心理士指定大学院を基盤とし、「公認心理師も取得可能」とする大学院が当面の間主流である。
臨床心理士指定大学院を廃止し、公認心理師一本に移行することを検討している大学院もある。
どの大学院も実習先の確保に苦慮している。医療系学部・学科を持つ大学院は比較的有利と考えられるが、現時点での情報は少ない。
まずは志望校の絞り込み
臨床心理士指定大学院を目指す方は、予備校の利用の有無にかかわらず、まず志望校の絞り込みを行うことが重要です。一つの大学院に絞るか、複数受験するのかによって、準備の進め方も大きく変わります。全国には約180校もの指定大学院が存在するため、複数の大学院を受験し、様々な大学の教育を経験することも視野に入れるべきでしょう。大学院での学びは、その後の人生に大きな影響を与えるため、自分に合った大学院を慎重に探すことが大切です。今後は、公認心理師養成に関する教育内容も重要な選択基準となります。公認心理師には研究論文の作成義務はありませんが、国家資格としての自覚と、関係行政論、法律の知識が不可欠であり、教員の指導力がより一層問われます。
指定大学院選びの具体的な基準:両資格取得、実習、カリキュラム
指定大学院を選ぶ際の具体的な基準としては、以下の点が挙げられます。
臨床心理士・公認心理師両資格の取得可能性: 現在いずれの資格も持っていない場合は、まず両資格の取得が可能かどうかを確認しましょう。公認心理師のみに対応する大学院や、臨床心理士指定大学院を廃止した大学院も存在します。
実習に関する真摯な対応: 実習に関する質問に対し、明確かつ丁寧に答えてくれる大学院を選びましょう。質問を曖昧にしたり、嫌な顔をしたりする大学院は避けるべきです。
公認心理師カリキュラムの明確性: 公認心理師カリキュラムが具体的に示されている大学院を選びましょう。
公認心理師希望者全員が取得可能か: 公認心理師を目指す学生全員が資格取得できる体制が整っているか確認しましょう。定員を超える場合は、選抜テストがあるかどうかも確認しましょう。
臨床心理士としての訓練の充実度: 特に心理検査やアセスメントなど、実践的な訓練を豊富に行っている大学院を選びましょう。就職時には、どのような心理検査を実施できるかが問われることが多いため、大学院での経験は非常に重要です。
関西圏の大学では、国公立では、大阪教育大学大学院が臨床心理士指定大学院ではありませんが、公認心理師に対応しています。大阪公立大学は混沌としています。私立大学では、関西学院大学、大阪人間科学大学、関西福祉科学大学、関西大学、花園大学、京都女子大学は、公認心理師のみに対応する方針を示しています。多くの大学院は、臨床心理士指定大学院を維持しつつ、公認心理師にも対応する方向で動いています。現時点では、両方の資格を持つことが望ましいと、私は考えています。医療機関への就職では、公認心理師が求められる上に、実施可能な心理検査の種類が重視される傾向にあり、大学院での訓練が不可欠です。
志望校選びのポイント
志望校選びのポイント:好み、学費、施設、指導体制など多角的な検討
願書や募集要項は通常5月頃に公開されます。それまでに、以下のポイントを参考に、志望校の検討を進めておきましょう。
好み: 最初は漠然とした興味でも構いません。
学費: 学校によって大きく異なるため、比較検討しましょう。
施設: 単に綺麗さだけでなく、設備や図書館の充実度も確認しましょう。
交通: 通学の利便性も考慮しましょう。
学校の雰囲気: オープンキャンパスなどに参加し、自分に合う雰囲気かどうかを感じてみましょう。
指導体制: 指導教授の専門分野や指導方針は、大学院生活の質を大きく左右します。
先生の研究分野: 自身の研究関心と合致するかどうかを確認しましょう。
実習体制: 実習時間や内容、実習先の種類などを詳しく確認しましょう。実習時間のカウント方法も確認が必要です。
就職: 卒業生の就職状況や、就職支援体制について情報を集めましょう。
入試日程: 複数の大学院を受験する場合は、日程の重複がないか確認しましょう。
入試科目: 試験科目や、英語の辞書使用の可否などを確認しましょう。
提出書類: 研究計画書など、提出書類の内容と準備期間を確認しましょう。
博士課程の有無: 将来的に博士課程への進学を考えている場合は、確認しておきましょう。
後期入試を実施する大学院では、前期入試の合格者数も考慮に入れる必要があります。
受験校の決定:外せない学校を中心に複数校を検討
臨床心理士指定大学院の数は、ピーク時からは減少傾向にあるものの、依然として全国に約180校が存在します。公認心理師への対応状況も大学院によって異なるため、慎重な情報収集と志望校選びが重要です。「どこでもいい」という考えではなく、受験する側が主体的に大学院を選ぶ時代です。
教員の誠実さも重要な判断基準です。教員同士が学生の前で互いの批判をしたり、学生の好き嫌いで合否を判断したりするような大学院は避けるべきです。また、常勤教員の大学への滞在時間も確認しておきましょう。
実習の充実度も重要なポイントです。公認心理師制度の導入により、大学院の実習時間は450時間以上に増加しましたが、中には実習とは言えないような雑務を実習としてカウントしているケースもあるようです。学生からの評判も参考に、質の高い実習を提供している大学院を選びましょう。
大学院の人数規模も考慮すべき点です。人数が多すぎると埋没しやすく、就職支援も手薄になる可能性があります。少人数制の場合は、丁寧な指導が期待できる反面、教員の負担が大きい可能性もあります。
最終的な受験校の決定は、入試日程が公開されてからになります。まずは、どうしても外せない志望校を決定し、その日程を中心に前後の日程で受験可能な大学院を検討します。通常は2~3校程度の受験が一般的です。
後悔しない大学院選びのために:情報収集と見学を積極的に
大学院選びで最も重要なことは、自身の状況や希望を全て洗い出し、それに合致しつつ、最も行きたいと思える大学院を選ぶことです。教育方針が一貫しており、学生へのサポート体制が整っている大学院は、入学後の満足度が高いと考えられます。
社会人の方など、時間的な制約がある場合は、通信制大学院や社会人入試を実施している大学院も選択肢となります。佛教大学や京都文教大学などがその例です。自身の状況を正直に伝え、大学院に相談することで、最適な選択肢が見つかる可能性もあります。
教育環境、学費、立地などを総合的に考慮することも重要です。特に教育環境は、学生満足度という観点から、在学生や卒業生の声を聞くことが有効です。学費については、学部と大学院の学費を比較したり、奨学金制度の有無を確認したりすることも大切です。
後悔しない大学院選びのためには、積極的に情報収集を行い、可能な限りオープンキャンパスなどに参加し、大学の雰囲気や在学生の声を聞くことが不可欠です。自身の将来を託すに足る、最適な大学院を見つけるために、慎重な検討を重ねてください。



