コラム
大学院に行って何の得があるのですか?
2015年9月29日
表題は、最近、この記事を読まれた方からいただいたご質問です。そうは言っても、毎年のように、数え切れないくらい受けた質問でもあります。私はこのような疑問が生じるのは、大学側に問題があると思っています。何度も言っていることなのですが、大学側は学位を出す以上、もっと積極的に学位の意味と使い方とそのメリットと将来像を描いていくべきです。L型だのG型だのと言う前に、まず今ある学位発行システムをアピールしていく必要があると思います。そして、たいていの大学の先生は大学院に行って、卒業しているわけですから、その良さやメリットは知っているはずです。有名な先生の大学院時代の生活を(できるだけポジティブに)語ってもらえれば、需要は多いと思います。大学側にしてみても、箱物の宣伝だけではなく、中身の宣伝になりますから、メリットは多いはずです。2018年問題とも言われる少子化時代、大学は大学院に生き残りをかけていく必要があるはずです。教員の自分の人生をかけて行った、その熱意と、そこで獲得したものを熱く語っていただきたいと願っています。大学教授が皆で語れば、これほど説得力のあるものはないのではないかと思うのです。安全保障関連法案に反対する教授の会も良いと思いますが、自分のお膝元の大学の大学院をり守り、発展させる会をやっていただけると良いと思っています。
最近、法科大学院や教職大学院が厳しい状況になりつつあるようです。私個人の意見としては教員免許をとるのに、教職大学院修了を要件とすべきだと考えています。今の時代、大学を出て教師になって人の人生の一幕に入るのはあまりにプレッシャーが多いのではないでしょうか?法曹も大学院を出ることに何も違和感はありません。最近、司法試験の問題が漏洩したという事件がありましたが、それは法科大学院のせいではないと思います。
大学院に行くメリットは、まず、研究能力を身につけられることです。そして、合理的思考のもと情報収集能力を身につけられます。私個人の経験で言えば、今、生活をしている能力はすべて大学院時代に身につけました。私の専門は仏教学
ですが、研究についての基礎能力は、もちろん学部で得たとは思いますが、勉強をした質も量も大学と大学院では比較になりません。また、勉強以外の経営に関する能力や、営業、教育産業事情コンサルテーション能力なども同時に身につけていきました。勉強していなかったんじゃないか?という批判があったとすれば、もっと勉強できたかもしれません。しかし、私は幅広く能力を身につけることが、結局は専門の仏教学に役立つであろうし、ヘタな資格よりも人間としての幅がある方が将来役にたつという考えもありました。
今、塾で仏教学の授業をしています。この生徒さんは臨床心理士指定大学院の学生で、仏教徒REBTと心理学の接点について学びたいと考えているのですが、私の土台は仏教学でその上にREBTが乗っているという話を先日もしたばかりです。すなわち、仏教を学んだことが全ての基礎(オペレーションシステム)になり、そこにREBTなどのアプリケーションが乗って機能するというイメージです。このオペレーションシステムは、何でも良いと思います。個人の好みです。しかし、なかなか乗せ換えることは難しいですので、慎重に選ぶ必要がありますが、たいていの場合、大学院で得られるものだと考えています。少なくとも大学院の合計5年間は私にとってはかけがえのない時間で、あれほど多くのことを学べた時間はその後の人生にはありません。その意味で大学院に行って本当によかったと思っています。
大学院に進むことに関する素朴な疑問として、「資格」と「就職」があります。資格は、MBAや臨床心理士などが大学院卒で取れる資格です。MBAは経営に関わりたい人はこれからますます必要になる資格になると思います。また、臨床心理士は心理学系の資格として最もバリューの高いものです。先日、公認心理師という国家資格が国会を通りましたが、これから重要な資格として大きく変動していきます。このような資格を目指して大学院に進むことを考える人は多くおられます。もう一つ大学院に進む目的として、就職がありますが、多くの人は就職がないと考えています。確かに大学院に行ったという事実だけで、就職が有利になるということはないと思います。しかし、自分なりに専門能力を身につけ、それを駆使できるようになっているならば、むしろ良い就職に出会っている人を多く知っています。だから、私は、大学院に進み、学歴とスキルを高めてから社会に出る方が、その人のためにも、社会のためにも良いと考えています。
大学院に行く得はたくさんあるのです。
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