常識破りの功罪Ⅰ
今日の目次
・何を今さら・・・
・中小企業の意識が問題だった
・あらゆる場面において大企業が主役だった
・中小企業に大きなチャンスが巡ってくる時代に
・少数派顧客との出会いが可能に
・商品の独自性だけでなく
・もはや大企業も中小企業もない時代
何を今さら・・・
数年前の話になりますが、或る大きな経済会議において、政府の重鎮を務める政治家が次のように発言しました。
「日本は大量受注大量生産の時代から、多品種少量生産の時代に移りつつあります。その際の主役は、長い間日本経済を支えてきた中小企業です。この中小企業が加速度的にその数を減らしつつある今、政府は全力でその存続をバックアップする所存です・・・・」
といった趣旨のことをスピーチしたのです。
まあ、何を今さらながら、といった当たり前の内容ですが、政治がどうあれ中小企業は、自ら時代に合った変革に取り組まざるを得えないときを迎えていると言えるでしょう。
中小企業の意識が問題だった
かつて日本は、品質が均一でかつ良質な工業製品を、ロスを少なくし大量生産することが得意なトップランナーとして、世界の製造業を牽引してきました。しかし、その後世の中の事情は激変しました。
すでに、均一な製品が大量に売れるという時代ではなくなってしまったのです。人々の嗜好は細分化し、欲しいものは人それぞれ異なります。また、そういった細かな欲求がかなり満たされる時代になったため、人々の求めるものは益々個別細分化してきています。
こういった傾向自体は、もうかなり以前から言われていたことでもあります。ただ、「その細分化された欲求に対応する主役は中小企業である。」と、言い切れるところまでには至りませんでした。
どうしてでしょう?それは、そういった傾向が顕著になっても、供給する側の中小企業の体質や意識そのものが、まだ狭い商圏や下請けといったポジションから簡単には抜け出そうとしていなかったからです。
あらゆる場面において大企業が主役だった
しかし、時代は変わりました。中小企業といえども自らのオリジナリティーを発揮して、何かしら世の中に受け入れられる商材を提供しなくては生き残れない状況になってきたのです。
これは単に「下請けから脱出すべく努力した方がいいですよ。」といった掛け声の問題ではなくて、本気でオリジナル商品を開発しなければ生き残れない時代になったことを表わしています。今まで採用してきた商売のモデルを、完全にチェンジしなければ存続することが叶わなくなったのです。
そもそも均一製品大量生産の時代は、その「売り方」に関しても「大量」というキーワードは共通していました。マスメディア等を通じて大量のCMを流し、大量に販売することで大きなリターンを得ていたからです。
ということは、生産、製造の場面ばかりでなく、宣伝、営業、販売の場面においてもマスであることが主流だったといえるでしょう。この時代、中小企業は、大企業に比べて製造の時点で規模の違いによるハンディーを背負っていたばかりでなく、販売促進、いわゆる広告宣伝活動においてもコストの高いマスメディアには手が出せませんでした。
つまり、大企業こそが、ほぼすべての場面において主役だったことになります。
中小企業に大きなチャンスが巡ってくる時代に
ところが、先述のように世の中の流れが、多品種小ロットを求める時代になってきました。もちろんこの流れに対しては、大企業も必死で適合しようと努力を重ねています。
しかし、これまでと収益構造を始めノウハウがまるで逆になったために、あまり適切な対応がとれているとは言えない状況です。ということは、中小企業に大きなチャンスが巡ってくる時代になったのです。
これまで、どちらかといえば不得手だった販売促進、売り込みといった点も、インターネットの普及でまるでその事情が変わってきています。大きなメディアを使わなくても自らをアピールすることが可能な時代になったのです。時代の風は、その生産から販売に至るまでまさに大企業よりも中小企業向けになってきたといえるのではないでしょうか。
ところが、そう(チャンスが巡ってきたと)捉えている中小企業は驚くほど少ないのです。相変わらず、旧来の体質やビジネスモデルを変えようとしない企業が多数派といえるでしょう。
少数派顧客との出会いが可能に
私は、上記のような変化を受け入れる気持ちのある経営者には、中小企業ならではの得意分野を活かして、何かユニークで独自性のある商品を企画し開発してもらいたいと思っています。昔であれば、そんなユニークな商品を好み、購入してくれる相手を捜すのはかなり困難な作業でした。捜し当てる手段がなかったからです。
しかし今、様々な媒体を通じて、そのような商品を捜している人に遭遇することが不可能ではなくなりました。どんなユニークな商品であっても、それを支持してくれる人(ファン)は必ず一定数存在します。
そういった少数派の顧客との出会いを可能にしてくれたのが、現在のネット社会です。インターネットの普及はこれまでのあらゆるビジネスモデルを変革させた、と言っても過言ではありません。大企業にしかできなかったマスメディアによる大量広告に対抗するだけの媒体を提供してくれているのがインターネットといえるでしょう。
商品の独自性だけでなく
ただここで、中小企業にとってのこういった新しい試みを成功させるための一つだけ重要な条件があります。それは、世の中のどこかに存在するであろう少数派の顧客候補の目に留まるためには、継続的に「情報発信(アウトプット)」をやり続けなければならない、ということです。
何故ならば、提供するものが、これまでなかったようなユニークな商品を想定しているからです。顧客の支持を得るためには、的確かつ継続的な情報提供を続けることが重要といえましょう。
そのためには、その商品そのものだけではなく、それにまつわるあらゆるコンテンツ(背景、いきさつ、こだわりなど・・)を整理し、発信し続ける必要性があります。何故ならば、そのことが顧客の共感を呼び購入に繫がるからにほかなりません。
つまり、これからの「情報発信(アウトプット)」は、マスからパーソナルなものへという流れを受けて、やり方そのものにも独自性のあるノウハウが欠かせないということになります。
もはや大企業も中小企業もない時代
とはいうものの、インターネットやSNSだけでなく、従来のメディアも全く無視するわけにはいきません。大きなメディアでなくとも、地方メディアなどであれば、販売促進を仕掛けるのに、中小企業にとってむしろサイズ的には適当とも言えるからです。
中小企業には中小企業の、時代に合った戦い方があります。これを戦略的に考えて、これまでの考え方やビジネスモデルをチェンジすれば必ず道は開けるはずです。というより、冒頭にも述べましたように時代的には中小企業にとって追い風なのです。
これほど大きい経済社会の変革期にあっては、もはや大企業も中小企業もありません。時代に合わせて変わることのできたものだけが生き残ることができるのです。企画製造から販売促進、営業に至るまで、今こそチャンスと捉えて、前のめりにどんどん進んでみて下さい。
まめな情報発信に効き目がある時代