わかってます?知ってるはずだ、が疑わしいこと―古くて新しい経営者の「情報発信(アウトプット)」―
今日の目次
・ソフトな路線で行きました
・声が良かった?!?
・人は感情に反応する動物
・ストーリーに「思い」や「熱」をこめて
・人の心を動かす発信を・・
ソフトな路線で行きました
以前、私はFMのラジオ番組を長く続けていました。(かれこれ10年くらい)そうすると、様々な聴取者の声が聞こえてきます。
私が受け持つ番組の場合、そのほとんどがビジネス系のテーマであり、中でも「経営支援」についての話題を多く取り上げました。そこでは、できるだけソフトな口調で語るように努め、特に強めの主張といったものを展開することはありませんでした。特定の対象に向かってきつい攻撃的な発言をしたり、激しく批判をしたりといったことは控えるようにしていたのです。まあ、もともとそんな気はありませんでしたが・・・・・。
それでも、ときには地域や業界に対して、苦言を呈するといったことはありました。ただ、そういうときも苦言を苦言で終わらせるのではなく、最後には前向きにその解決策まで必ずお話するようにはしていました。
つまり、ネガティブかつ極端に強めのメッセージ、といったものはできるだけ発しないよう心掛けていたのです。そういった姿勢もあってか、聴取者からの声もクレームに類するものはほとんどなく、どちらかといえば、番組への感想や私の印象について好意的なものが多かったように記憶しています。
声が良かった?!?
ところで、私がラジオでお伝えしようとするのは、先述のようにほとんどがビジネス、特に経営に関する内容ですので、その骨子についてはロジカルな論調で展開することになります。事前に何かビジネスについてのテーマを考え、そのテーマについてできるだけ論理的に組み立てを行ない、それがわかりやすく伝わるよう努力をする訳です。
ところが、ときどき聞こえてくる番組への感想やご意見は、どちらかといえばそういったロジックに対するものよりも、話し方がソフトだったとか、声が良かったとか、俳優の誰それの声によく似ていたとか、いったものが大半でした。
つまり、およそ私が伝えようとしたロジカルなビジネス上に関するものは少なく、反対の感情に響いた、といった感想みたいなものが多かったのです。
その理由の一つに、地域FMの場合、私が聞き手として期待する経営者のみなさんよりも女性の聴取者が多かったということもあったと思います。ですから、できるだけロジカルに、聞いて欲しいことを伝えようとする私にとって、この反応は正直言っていささか肩すかしを食ったような気分にはなりました。とはいえ、何も反応がないよりもはるかにましですので、素直に喜ぶように心掛けていたのです。
人は感情に反応する動物
さて、こういった経験を経て感じるのは、「人は、普通は論理的というよりも、どちらかといえば、感情的に他人の言うことを聞いているんだな。」ということです。もちろんロジカルに捉えようという姿勢が0(ゼロ)とは言いませんが、すっと入ってくるのは感情的な部分からなのだな、ということを経験的に感じたのです。
人が何か「情報発信(アウトプット)」するときに、その内容に関しては、その発信者の中で、きちんと論理的に整理されているべき、とは思います。そうでなければ、そもそもビジネスに関する情報など表現できませんし伝えられるはずもありません。
しかしながら、それが他者に伝わるときは、まずその人の感情部分に反応し、そこからロジカルな部分に入っていく、ということです。このことは、大事なポイントとして、発信側があらかじめ知っておくべきだと思うのです。
ストーリーに「思い」や「熱」をこめて
こういったことを考えていると、経営者がなにか「情報発信(アウトプット)」するときには、それが無味乾燥な事実の羅列だけでは済まない、ということに気がつきます。発信する情報が、本当の意味でこちら側の魂のこもったものでなければならないのです。
そういう点において、例えば会社のストーリーというのは大事な役割を担っているといえましょう。ストーリーの背景にあるのは論理というよりも、会社が積み重ねてきた数々のエピソードや思い、譲れないこだわり、受け継いできた哲学のようなものが大半だからです。
そう考えてきたときに、経営者のやるべき「情報発信(アウトプット)」というものは、おのずとその性格が規定されてきます。それは単に事実の報告などではなく、それを聞いたり読んだりした人の感情に訴えるだけの「思い」のようなものが投影されている必要があるということです。そういったある種「熱」のこもった「情報発信(アウトプット)」こそが共感を呼び、やがてそれを知った人々の深い支持が得られるようになるのではないでしょうか。
人の心を動かす発信を・・
こう書いてくると「情報発信(アウトプット)」という行為自体が、なんだか難しいハードルのように思えてくる恐れが生じます。しかし、決してそんなことはありませんので心配しないでください。
自らの置かれている立場と、それに対する自分の思い、これからのビジョンのようなものを、常時素直に表明していけばいいのです。ただ、こういったことを言葉によって自在に表現できるようになるためには、多少の訓練と粘り強さが必要になります。
経営者によるめげることのない継続的な「情報発信(アウトプット)」。経営者という立場であれば、何とか踏ん張って続けてみて下さい。人々の感情を動かした見返りは必ず何かしら良い形で返ってくるはずです。
ラジオは顔が見えないからなあ・・・