参加のハードルが低い格好の自己アピールのステージ、地方メディア―むしろ肉声、肉筆のリアリティーに心が動く時代―Ⅱ(おしまい)
情報発信、二つの大きな効果
私はこれまでずっと
― 世の中にインプットについて熱心に取り組む経営者は多いが、それをアウトプットする人が少ない。経営者はもっとアウトプットに取り組むべきだ。―
と言い続けてきました。
その際に、アウトプットには2つの大きな効果があるとも述べています。
それは
・アウトプットすることで、インプットされた情報が、自分の頭の中で整理され、記憶にも定着する。
・自分のスタンスや考えは、アウトプットという形できちんと伝えれば伝えるほど他者からの理解が深まる。
といった内容で、まあ至極当たり前のことを言っているにすぎません。
書くまでの舞台裏
ところで、アウトプット即ち「情報発信」には、さらにもう一つ建設的な意味での大きな役割があります。それは
・アウトプットは必ず次の有用なインプットの源泉となる。情報を発信すればするほど必ず新しい情報が返ってくる。
ということなのです。
例えばこのコラムです。私はこのコラムをもう何年間も書いています。そうすると「よく書くことがありますね。きっと書くことがお得意なんですね。」などと言われます。
しかし、ことはそれほど簡単ではありません。種明かしをすれば、実はこの1本を書くために、何かしらインプットしなくては、と、常に四苦八苦しているのです。普通に日常生活しているように見えて、いつも鵜の目鷹の目で「何か書くネタはないか」と探し続けているのです。
更に種明かしをすれば、これは!というネタが見つかったならば、確かに書くこと自体は慣れていますので、もうそれほど苦ではありません。それよりも、このインプットすべきネタ、テーマ探しが大変なのです。
双方向性という効果
さて、書くまでの大変さはさておいて、このコラムをずっと発信し続けているとどういったことが起こるでしょうか。実は、それに対して何かしらの「反応」というものが返ってくるようになります。
例えば、自分が事業として取り組んでいる会計事務所の経営に関して「このままでいいのだろうか?やり方は間違っていないだろうか?」といった疑問は、常に頭から離れないものです。また、そういった心の迷いや逡巡といったものをテーマに書くこともあります。
そうしていると、コラムを読んだ方からときおり「この間のコラムすごくよかったですよ。どんな風にビジネスをなさりたいのかよくわかりました。」といった反応を聞くことがあります。そこで「ああ、これでよかったんだな。」と確認できるわけです。
様々な「反応」の形
以前、多くのコンサルタントが集まるサイトで、コラムの人気度ランキングに参加していたことがありました。そのとき示された順位も、書く上で参考になったものです。大して自信のなかったコラムが上位にランクされたり、これは!と思った自信作が意外に不評だったりと、こちら側の思いだけではままならない場合が結構ありました。
こういった世間のちょっとした反応は、有用な情報としてその後の学習の材料になります。そしてそれは、私の中にインプットされ蓄積されていくのです。
また「情報発信(アウトプット)」に対する反応というのは、必ずしも「感想」とか「返信」とか「順位」とかいった直接的なものだけではありません。
例えば、知人である社長に、「セミナーを企画しているんですが、どうも集まりが悪くて・・・」といった相談をするとします。そうすると、その社長が私の考えに賛同してくれそうな人に声をかけてくれます。
また、それだけでなく、コラムやラジオなどの視聴者、読者、知り合いといった人々が集客に協力してくれます。これは普段、私の考え方や方向性についてよく理解をしてくれているからにほかなりません。これなどは「情報発信」に対して「反応」が、とてもありがたい形で返ってきた良い事例と言えるでしょう。
価値創造は流動性の中に
このように、常に前向きにアウトプットを継続していれば、その発信に対して必ず何らかの形で反応が返ってきます。そしてそれは、新たなインプット情報としてこちらに刻まれ、蓄積されていくのです。つまり、情報というのは一方通行ではなくて、常に還流しているという意味で流動的です。
激しく動き続けているこの世の中に適合する新たな価値は、こういった流動性の中からしか生まれてきません。「価値創造は流動性の中にある」といっていいのです。事業というものが、常にこの新たな価値を求めているのだとすれば、インプット、アウトプット、そしてインプットと繰り返すことで、その価値を生み出していくことは、経営者にとって必須の条件といえましょう。
経営者が「情報発信」即ちアウトプットすれば、必ず何らかの反応は返ってきます。それを再びインプットすることで、更なる成長が図れるのです。情報を発信し続けていれば、やがてそれはいい形で返ってくる、そう信じて社長の「情報発信」に改めて向き合ってみて下さい。
今日も悩む情報発信のネタ