常識破りの功罪Ⅱ
或るコンサルタントの発言
先日の大きな会合でのことです。その会ではいろいろなコーナーが準備されており、中でも4人のコンサルタントによるパネルディスカッションは、その会の目玉となる催しでした。
パネルディスカッションの中で、一人のコンサルタントから次のような発言がありました。
「例えば、年商、3千万から5千万円くらいの企業で、事業は安定していて利益もそこそこ出している、こんな会社あったとします。社長は新しいことにチャレンジする意欲とかはそんなにないものの、顧客その他に対しても一定の社会的貢献はしている。こんな企業に対して、我々が外から『企業は常に成長発展しなければならない、もっといろんなことに挑戦しなさい。』と、煽り続けることがいいことなのか。それはそれで充分社会的使命は果たしているのだから、あえて煽る必要もないのではないか・・」
といった発言が成されたのです。
どうする?ビジネス環境の変化
この考えには、私も基本的には賛成です。人にはその人なりの生き方があって、それを誰にも侵されたくはありません。私も、個人的な意味では、そういった生き方を支持するものなのですが、企業経営者という立場になれば少し違った見解がまた出てくるのです。
中小企業経営、特に地方のそれは年々歳々、厳しいものになっています。それは企業の持っている商材やノウハウがどんどん陳腐化するから、というのが主な理由ではありません。もちろん、あまりにも長く商材やノウハウの更新やリニューアルを放置しておくと、さすがに古臭さは否めなくなるかも知れませんが、これはそれほど急激に起こるものでもありません。
問題は、企業そのものよりも「企業を取り巻く外部環境の急激な変化」ということなのです。というのは、特に地方の場合、地域の過疎化高齢化というのは留まることなく進行しています。去年より今年、今年より来年とビジネス環境は、結構なスピードで悪化して行きます。
そんな中で、何も新しいことに挑戦することなく、業績を維持していくのはかなり難しいことなのです。単に「新しいこと」というよりも、常に「業績を伸ばすための何か」を仕掛けていなければ、停滞では済まなくなるのです。
見つからない有効な解決策
それでは冒頭の「そこそこの規模でそこそこの事業を営んでいれば、生き方としてはそれでいいじゃないか。」といった、その社長の人生観、経営姿勢に対しては、どういった向き合い方をしていけばいいのでしょうか。
実は、私はその点をパネルディスカッションの会場でもパネラーの皆さんに質問しました。「そういった考え方が成立するであろう都市部と過疎化高齢化が急激に進む地方とでは少し事情が違うのではないか。」と。
これに対する各パネリストの回答は結構苦しいものだったと思います。というのは、この課題に関しては有効な解決策がなかなか見つからないからです。疲弊し続ける地方のビジネス環境の中で、一人経営者だけが自らを鼓舞し、成長発展に向き合っていくのはかなりきついことに違いありません。
応援団は必ずいる
私は彼らを応援しエールを送り続ける立場の人々、地域の金融機関や会計事務所、コンサルタントといったポジションの人たちが何かをすべきだと思います。その具体的な方法として、絶えず何らかの形で経営に有効な情報を継続的に提供していくこと。そして、実行していただくようにあの手この手で励まし続けること。こういった努力を続けていれば、必ずそれに応えてくれる経営者は出てくるはずです。
私は、そんな中から、さらに積極的に自分の事業の発展成長に向き合いたい、と考える経営者が出てきたときは、満を持してコンサルティングを提供していくつもりです。中小企業、特に地方のそれは当面苦しい戦いが続くでしょうが、いつの時代も必ず応援団というものはいます。そのエールを受けて、己の事業の成長発展については、諦めることなく挑戦していただきたいと思います。
経営者はあきらめないでください。