常識破りの功罪Ⅱ
[見出し:職人技から工業製品へ]
今回取り上げた日本酒業界に於ける『獺祭』の挑戦を通じて、私は「これは、住宅建築と少し似ているんじゃないかな。」と思わされたのです。
住宅の建築は、従来地域の大工さんに任されてきました。
大工の棟梁とそのお弟子さんたちが手掛ける仕事の世界だったわけです。
そこに住宅メーカーという業界が新たに出現しました。
職人の世界だった住宅建築を工業製品へと変貌させたのです。
バラつきのある職人の世界と違い、メーカー製品は品質が一定しています。
また、住宅メーカーは、多くの競合企業が競い合う中で、その品質を常に高度に磨いてきました。
規格もののため、完全自由設計とはいかないという限界はあるものの、多くの支持を得て住宅メーカーは大きな産業として発達したのです。
『獺祭』も日本酒を従来の職人の世界から、高品質の工業製品へと変貌させたことになります。
とはいえ、住宅と違い日本酒は嗜好品の一つなので、「衣食住」の一画を成す住宅産業と同じような産業構造まで発展するとは思えません。
業界に一石を投じたといっても、独自の企業ポジションでこれからも進んでいくことでしょう。
インタビューの最後に桜井氏は次のように述べています。
― 「この状況に慢心するつもりはありません。
大切なことは挑戦すること。
守りに入れば、お客様は離れてしまう。
チャレンジを続けている間は、お客様はついてきてくださると思っています。
「いい酒」を造って、世界中の人たちに日本酒のよさを訴えたいですね。」―
『獺祭』の挑戦をこれからも見守っていきたいと思います。
お花見にもお酒ですよねー
おしまい