常識破りの功罪Ⅳ(おしまい)
さて、格差についてさらに考えてみたいと思います。
これは以前にもこのコラムでも書いたことですが、地方と中央との格差は経済面だけではありません。
もちろん、大きな意味では「中央経済」と「地方経済」という格差がその背景にあり、それがすべてに通じるというのは言うまでもないことです。
その格差はいろいろな形で現れます。
所得格差、交通格差、教育格差、医療格差、司法格差、とあげていけば様々あります。
しかし、私が地方に帰って約20年以上になりますが、最も切実に感じるのはなんといっても「人材格差」なのです。
地方では、然るべきビジネスのポジションを担うだけの人材を確保することが極めて難しいのです。
特に男性の場合、大学卒業後、都会で就職するケースが一般的であろうと思われます。
当初はどこかで今の職場を辞めて、親の事業を継がなければ、と思っていても、田舎の事業の不振ぶりを目の当たりにしたり、このまま給与所得で暮らした方が安定しているのではと考え始めます。
そうなれば、そのまま都会に残ってしまうケースが普通に起こりえるのです。
リクルートに関する需要供給の事情から言えば、田舎においてはまだ女性の人材の方が確保可能といえるでしょう。
有能な人材が残っている可能性が高いのです。
ところが今や、先述した地方出身の男性が数多く残っているはずの、その都会でも人手不足だと聞きます。
この状況が続くとしたら今後地方が、慢性的な人手不足に陥ることは明らかだろうと推測されます。
この点は、地方だからという理由のみならず、中小零細企業という事業規模の切り口においても同様のことが言えるのではないでしょうか。
大手企業ほどには有利な条件を出すことのできない中小企業においては、これから慢性的な人手不足が予想されるのです。
したがって、地方のしかも中小零細企業となれば、ダブルの不利な条件において人材の確保が難しくなるのではないでしょうか。
これは、今後より切実な問題となっていくことが予想されます。