常識破りの功罪Ⅳ(おしまい)
中小企業経営、旦那衆の時代
その頃、商売をする「旦那衆」とそこに勤める「使用人」との間には大きな格差がありました。
現在のように、その身分をある程度制度で保証された「従業員」或いは「社員」という感覚ではありません。
もっとその地位が曖昧な「使用人」という立場だったのです。
旦那衆が、高度経済成長期の波に乗って、ぐんぐんその所得を伸ばしていく一方で、「使用人」にはお小遣い程度の賃金しか払われなかったのです。
その代わり、部屋や食事があてがわれ、一つの社会的弱者の受皿でもあったといえましょう。
これは「いい悪い」の問題ではありません。
「住込み」や「丁稚奉公」といった雇用形態が、ごく一般的だった当時の日本における社会背景では、これは普通のことだったのです。
また、今人気の「公務員」も、当時(昭和30年代から50年代くらいまで)は、特に地方の場合「商売」へ行く才覚のない人材の受皿程度のポジションでしかなかったといえましょう。
収入も商売人のそれとはかなり格差があったのです。
高度経済成長時代も終わり「商売」の勢いが下降していくのと反比例して「公務員」に対する待遇や保証は充実していきました。
しかしそれもやや行き過ぎた感があり、今や公務員も批判の矢おもてではありますが。
さてその後、地方の商売も、個人で始めた小さな商いから、組織や制度のもう少し充実した「法人」へと変化していきました。
いわゆる、個人商店から会社組織への「法人成り」というプロセスです。
この点は、税理士事務所50年の歴史を振り返るとよく理解できます。