義理人情の世界と現代経営―ウエットなしがらみをいかに断ち切るかは大きな課題―Ⅲ
近年、事務所を取り巻く環境にひとつの傾向が出てきました。
実は、新規のお問い合わせが増えているのですが、いずれも規模の小さな事業所が多いのです。
中には年商1千万円にも満たない事業もあります。
この経済情勢の厳しい中、小さな事業所が何故わざわざコストのかかる会計事務所にアプローチしてくるのでしょうか。
税務申告だけであればもっとお金のかからない方法はいくらでもあります。
お問い合わせの際、彼らが異口同音に言うのは
「お宅の事務所は税金のことばかりではないと聞いたものですから。」
ということです。
つまり、「税」の問題だけではなくて他のいろいろな制度や資金繰り、経営そのものの相談に乗って欲しい、という期待なのです。
現在の事業規模や年商はまだ小さい彼らではありますが、将来を見越して自らに厳しいハードルを課しているようです。
そのハードルを一緒になってクリアしてくれるパートナーを探しているのです。
一方で、その彼らに比べてまだまだ大きな年商や規模を維持しながら、値下げを要求してくるお客さんもいます。
売上が下がってきて歯止めがききそうもないから顧問料を下げてくれ、というものです。
彼らは例外なく
「ちょこちょこっと税金の計算をしてくれるだけでいいから。」
といいます。
既に記帳能力はあるので、手間はかけないから値段を下げてくれ、ということなのです。
昔から商売を続けてきており、それなりの有形無形の資産を持ち十分なキャリアもあるのに将来に対する志(こころざし)を失いつつあるように見えます。
このように、一度後ろ向きになったお客さんに前を向かせるのは容易なことではありません。
つづく