経営者の頭の中にあるものを表面化させる―経営計画の策定作業は口述筆記に似ている―Ⅱ
先日、ある会計人の集まりで私の先輩先生にあたる人たちのご挨拶がありました。
これは、経営計画の作成とご提供を、我々会計事務所の基本業務に取り入れて行こう、という税理士会計士のグループの集まりです。
挨拶に立たれた先生方は、すでにこの分野を確立された錚々たるメンバーでした。
その中で、経営計画の策定と提供を事務所の仕事として取り入れ始めた初期の頃のお話が、大変面白く興味深かったのです。
今では価格もだいぶこなれて、随分購入しやすくなった経営計画作成ソフトも、開発したばかりの約30年前は相当高額だったようなのです。
ご挨拶の話の中で、先輩のI先生が
「当時1300万円した経営計画ソフトを、使い方もよくわからないまま買いましたよ。」
と、淡々と語られます。
さらりと言ってはいますが、これはすごい話です。
おそらく、今の貨幣価値に換算して3000万円以上はするのではないかと、推察されからです。
我々の業界における投資としては、普通あり得ない金額なのです。
しかも、現在のものからすると、容量も処理速度も使い勝手も格段に落ちる代物だっただろうと思います。
それでも、この先輩方は無理をしてでも購入して、新しい世界にチャレンジしてきました。
だから、今この場にこうやって立って、大勢の人を前に話をしているのです。
改めて考えてみるとこれはすごい話だなあ、とつくづく思います。
「いやー、あの頃は高かったんだよね。」
と、振り返る言葉の中に、ソフトを販売した会社への恨みつらみといったものは微塵も感じられません。
実際、そんなことは考えてもいないでしょう。
現在の機能性、容量、価格などからすると、べらぼうな買い物だったにもかかわらず、「失敗だった。」などとは、これっぽっちも考えていないところが大したものなのです。
つづく