日本医師会「選択療養」に反対のワケ
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選択療養の導入で、治療の選択肢を拡大できる
規制改革会議が3月に公表した「選択療養制度(仮称)」(以下「選択療養」)の提言に対して、日本医師会が強く反対しています。選択療養とは、健康保険で認められている治療法(保険診療)と、認められていない治療法(保険外診療)を併用する「混合診療」の制度のことです。これにより、患者が希望した場合、医師との契約に基づき、簡単な手続きで極めて短時間に健康保険から保険外併用療養費の支給が受けられることとなります。今までの治療では改善しない困難な病気と闘う患者が、治療の選択肢を拡大できるという大きなメリットがあります。「欧米で受けられる医療が、なぜ日本で受けられないのか?」と疑問に思っていた患者は少なくないはずです。
しかし、安全性・有効性等を客観的に判断するプロセスがない
では、なぜ医師会は反対しているのでしょうか?一番のポイントは、欧米で行われている治療が、人種や体格の違う日本人で安全に、しかも有効に使用できるのかということです。つまり、安全性・有効性等を客観的に判断するプロセスがないのが問題とされているのです。保険外診療を行うと、それによる副作用に対する検査や治療は患者個人負担となります。「患者個人が払うから良いではないか」という乱暴な意見もあります。確かに、保険外診療だけなら、それでも良いかもしれません。しかし、選択療養を選択し、たとえば、重篤な薬疹、肝障害、腎障害などの副作用が起こった場合、保険診療内のコレステロールを下げる薬が悪かったのか、保険診療外の新薬が悪かったのか、医師でも判別が難しいケースも少なくないのです。そうなれば、健康保険を使って治療することになるかもしれません。その保険費は、国民の税金から使われます。
また、患者が十分な知識を持ち合わせていないと、医師が不適切に新薬を勧めるケースも出てくるかもしれません。実際、保険外診療が必要な患者層のひとつである一般社団法人日本難病・疾病団体協議会の要望書(2014年4月3日)では、「藁にもすがりたい思いの患者にとって、対等なインフォームドコンセントがどの程度担保できるかは疑問です。また過去には医師が自由に投薬できることによって多くの難病患者の生命と健康に大きな被害が生じた経験を有しています。その時代への逆戻りは許されないと思います」とあります。一定の汎用性・有効性が認められた医療技術が、必ずしも安全とは限らないのです。
医薬業界一体となり「ドラッグ・ラグ」の短縮を
「必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により確保する」という国民皆保険制度の理念を考えると、やはり問題点は、必要な薬品や治療の開発や申請に時間がかかりすぎる、いわゆるドラッグ・ラグです。医薬業界一体となって、より早い薬事承認および保険収載を目指し、安全な新しい治療を提供することがより重要ではないでしょうか。
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