産休・育休の復職促進に有効な策
- カテゴリ:
- ビジネス
「仕事と育児の両立」を妨げる3つのハードル
育児・介護休業法の改正がはかられても、育児をしながら働き続ける当事者が抱える課題解決には追いついていないのが現実です。そこには、「仕事と育児の両立」を妨げている3つのハードルがあるからです。
1点目に「3つのロス」が挙げられます。①育児休業は無給、復職後に短時間・短日数勤務をしても所得は比例減額の「所得ロス」。②育児休業から復帰した後、査定や昇進にマイナスが出る「キャリアロス」。③業務知識が日進月歩で進む今日、復帰後についていけない「業務知識ロス」という不安要素。
2点目は、会社が「仕事と育児の両立支援制度」を整備しても、現場に利用を躊躇させる雰囲気があること。3点目は、勤務中の育児サポート体制の不足です。
育児と仕事の両立を応援するメッセージを常に発信することが大切
女性はライフイベントに伴う選択肢が多いため、職業キャリアでもメリハリを希望するケースが多いようです。「子どもが小さいうちは育児に時間を充てたい」「両立させる自信がない」などの理由で管理職を辞退したり、降格を希望する女性が多いのも現実です。会社は、復職後の職業キャリアでモチベーションを失うことがないよう、「いつ」「どの」ポジションからでも再チャレンジ可能な環境を整備することが重要でしょう。
例えば、JR東日本では、昇進・昇格の査定にあたり、育児休暇中に会社が指定する通信研修講座を修了すれば、1講座につき3カ月を在給年数等に算入する取り扱いを導入しているそうです。さらに、ユニクロを展開するファーストリテイリングは、給与や待遇面は正社員と同じながら、勤務時間の条件を外して週20時間以上の短時間勤務も認める「短時間勤務正社員制度」を導入し、今後の動向が期待されます。
会社は、「育児はキャリアロスではない」「子育てがひと段落したら管理職にチャレンジしてほしい」というメッセージを絶えず発信し、育児と仕事の両立を応援している姿勢を示すことにより、キャリアロスに対する不安や、その後のモチベーションダウンから女性社員を救うことができます。次世代の背中を押すことにもつながるでしょう。
会社ができることは「法を上回る子育て支援制度」の整備
勤務中の育児サポート体制は、未就学児童の時期は保育所の入所時期を考慮した育児休業制度を、就学児童の時期は学童保育の実態を考慮した時差勤務制度を整えること。さらに、子どもの突発的な病気と通院のサポートとして、子どもの看護休暇が取得できる年限の拡大や、半日や時間単位での利用許可などの柔軟な制度設計は、会社の努力が及ぶ範疇ではないでしょうか。
そして、これらの制度が真に活用されるためには、担当者の急な休みでも業務に支障を来たさないよう2人以上の担当者制により対応できるようにするなど、現場の仕組みづくりをセットで着手しなくては意味がありません。勤務体制の整備は、現場で「制度を利用する側」の不安と「サポートする側」の不満を双方で軽減するために不可欠です。
最後に、産休・育休社員の復職を促進する企業風土の変革のために、ワーク・ライフ・バランスの推進度を人事考課の評価項目とすることを提案します。産休・育休社員の復職を促進するために会社ができることは、「法を上回る多くの子育て支援制度」を整備することにより環境を整え、機会均等主義で男女に関わりなく実力重視で評価する企業風土を根づかせることに尽きるのではないでしょうか。
豊富な経験と細やかな対応で頼れる人事・労務の専門家
大東恵子さん(あすか社会保険労務士法人)
関連するその他の記事
副業のためのサイト売買という選択肢
中島優太さん
サイト売買に特化したM&Aアドバイザー
4月施行の労働条件明示ルールの変更が働き方に及ぼす影響
小嶋裕司さん
就業規則の整備による人事労務問題解決社労士
4月施行の労働条件明示ルールの変更は労使関係にどのような影響を及ぼすか?
小嶋裕司さん
就業規則の整備による人事労務問題解決社労士
コロナ禍後の勤務形態変更の問題点 ~テレワーク廃止を会社は決定できるか?
小嶋裕司さん
就業規則の整備による人事労務問題解決社労士