ケアハラ増加も 介護離職を防ぐには
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労働者の介護休業制度の利用率が低い実態
「介護離職」と言う言葉が聞かれるようになりました。介護のために仕事を辞めざるを得ない人が年々増え、社会的にも問題となっています。
総務省がまとめた平成24年就業構造基本調査によると、15歳以上で介護を行っている人が全国で約557万人。そのうち、働きながら介護をしている人が約240万人います。育児・介護休業法では、介護休業や介護短時間勤務、介護休暇といった制度がありますが、制度の使い勝手が悪いためか、利用しているのは約40万人と少ないようです。
家族の介護で要職を外されるなどケアハラの問題も
介護離職は、企業・労働者双方にとって影響が大きいものであり、その対策が不可欠になっています。企業にとっては、経験豊かな働き手を失うことにつながります。労働力人口が減少し働き手不足が深刻になっている今、多額のコストをかけても、新たな人材を確保ができるとは限らず、困難を極めるかもしれません。
一方、労働者にとっては、介護のために「キャリアが下がる」「収入源を失わざるを得ない」という状況が生じます。中には、職場で家族の介護を行っていることを打ち明けると、要職から外されたり退職を暗に促されたりと、ケアハラスメント(ケアハラ)も起こっています。
高齢社会の現在では、家族の介護は、どの労働者にとっても起こり得ます。しかし、昨今の人員に余力のない社会情勢から「家族の介護はお互いさま」といった風潮が企業内で起こりくいことが考えられ、介護離職が生じているように感じます。
労働者は公的な介護保険サービスのほか、地域のサポートを活用
では、介護離職を防ぐにはどうしたら良いのでしょうか。まず労働者として、「介護保険サービスを活用しながら、仕事を続けていくにはどうしたら良いか」を考えます。介護サービスを受けていない場合は、地域にある「地域包括支援センター」が介護の相談に応じています。電話で問い合わせてみてください。公的な介護保険サービスだけでなく、住民参加型の地域での見守り活動など、様々な社会資源を活用するのも一つです。
企業側の「経験豊かな働き手の離職をどう防ぐのか」については、環境の整備を講じていく必要があります。先に述べた、介護休業や介護短時間勤務、介護休暇といった制度は、法律上では「日数が少ない」など、労働者が使いにくい部分があるので、介護を行っている労働者の意見を取り入れながら制度の充実を図ることが必要です。
「仕事の質は落とさず、量を減らす」ことで離職者を減らす対策を
介護短時間勤務の制度は、勤務時間を減らしながら介護を続けることができる制度ですが、給与も勤務時間に応じて減る場合が多いです。制度を活用するポイントは、労働者の「仕事の質は落とさず、量を減らす」ことです。対象となる労働者の日頃の業務を「棚卸し」し、他の労働者でも担えるものなどは応援を頼み、量を減らします。応援してくれた労働者には、応援分の評価をしっかり行います。
一方、その労働者のスキルを必要としている業務、つまり「質の部分」は、そのまま担ってもらいます。こうすることで、労働者のキャリアも確保ができます。「企業の担い手」として力を発揮してもえらえます。
このような仕組みを整え制度を活用することで、労働者・企業双方にダメージが大きい介護離職を防ぐことができるでしょう。
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