血圧の基準値、どれを信じるべき?
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日本高血圧学会と日本人間ドック学会とで異なる数値
先日、日本人間ドック学会から、血圧、血中コレステロールなどの正常値が「従来よりも高くても大丈夫」と受け取れるような報告があり、大々的に報道されました。3日後、訂正文が学会ホームページに出され、また4月1日、日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン」も改定されたことで、少し現場で混乱をきたしています。血圧や血中コレステロールの基準値はどうなるのでしょうか。高血圧を例にして解説します。
日本高血圧学会では、診察室での成人の血圧が140(上の血圧)/90(下の血圧)mmHg以上であれば「高血圧である」とされています。一方、日本人間ドック学会からの報告では、「147/94mmHgまで健康である」とされています。なぜ、このような違いが生じたのでしょうか?実は、これらは全く違う視点から出された数値だからです。
日本高血圧学会は、何千人何万人という単位の実際の患者の統計から、血圧が高いことにより起こる脳卒中や心筋梗塞などの心血管病を予防できる血圧を求め、「正常域血圧」としております。
一方、人間ドック学会では、ドック検診を受けた健康と思われる人たちの血圧の値の幅を持って正常としています。つまり、現在健康でも5年後、10年後は心血管病が起こっているかいないか、わからない数値です。
なぜ、血圧を下げる必要があるのか?
今回、争点となっているのは「どの数値から血圧を下げないといけないか」ということなのですが、ここに多くの勘違いがあります。血圧の数値を下げることがゴールではありません。
血圧が高いということは、血管を押す力が強いため、血管に傷が入り、そこからコレステロールが侵入し、血液の流れる道を細くしてしまいます。これを「動脈硬化」と言います。どんどん血液が流れる道が細くなると、あるとき全く流れなくなります。それが脳につながる血管に起こると「脳梗塞」、心臓につながる血管に起こると「心筋梗塞」が生じます。つまり、血圧が高いことによって生じる「脳卒中」「心筋梗塞」「心不全」など、心血管病をいかに予防するかということが目標です。
日本高血圧学会が示す「正常域血圧」を正常と考えて良い
日本高血圧学会の示しているように、診察室血圧で140/90mmHg未満、早朝に家で計る血圧(早朝家庭血圧)で135/85mmHg未満の「正常域血圧」を正常と考えて良いでしょう。75歳の高齢者においては、体を動かすのが非常に緩慢な人や、薬が多すぎる人などでは、150/90mmHg未満まで許容範囲と改訂されました。
これらの数値に近づいたら、正常値を超えるのを待つのではなく、積極的に散歩のような有酸素運動を取り入れ、塩分を極力控え、体重をコントロールするような生活習慣の改善を目指しましょう。そうすることが心血管病を予防し、健康に歳を重ねるために、体にもお財布にも最もやさしい方法です。
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