派遣法改正で非正規雇用増加の懸念
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現在の派遣法では、業務単位の期間規制である点で戸惑いも
現在、派遣法は、専門26業務以外の業務派遣の場合、「その業務の派遣の上限期間が3年」という規制があります。雇用契約ベースでみれば、個々の労働者に期限規制があるのではなく、業務単位の期間規制である点で戸惑いが生じることが問題視されていました。
2015年4月からの制度適用が予定されている「派遣法見直し案」では、企業が派遣労働者を受け入れる業務ごとの上限期間を無くし、人単位に派遣期間の上限期間3年としていく方向です。
今回の改正で、企業全体の非正規労働者の割合が増加する可能性も
派遣法の原点趣旨に立ち返れば、派遣先企業の正社員を脅かさない、つまり、派遣労働者にむやみに仕事がシフトしないようにする常用代替防止が重視されるところです。しかし、今回の派遣法改正の結果、派遣先の正社員の業務が派遣労働者に置き換わり、正社員の減少を模索することにもつながると考えられています。派遣先企業の経営方針や労務方針によっては、派遣労働者の増加を招くでしょう。このことは、企業全体の非正規労働者の割合を高める結果になる点で懸念されるところです。
今回の派遣法改正は、経営サイドからみれば便宜性がより高まる内容であるため、派遣労働者の活用が増える可能性があります。2012年の労働契約法改正では、同じ職場で契約更新が5年以上になった場合、無期雇用転換権が労働者に認められることとなりました。しかし、今回の派遣法改正で、有期雇用契約で働く労働者の増加が見込まれるため、「雇止め」の問題が今まで以上に発生すると考えられます。実際、5年を経過する場合の無期転換権の付与は、有期雇用の雇用実態による事後的な判断にすぎず、「有期雇用に関する入口規制が必要である」との話も出ています。
派遣労働者の活用が促進されれば、非正規雇用の問題が一層深刻化
2013年の総務省の労働力調査によれば、非正規の職員・従業員は1906万人にのぼり、この10年間で400万人以上増加しています。そのうち、契約社員は273万人で、役員を除く雇用者に占める非正規従業員等の割合が36.6%になっているのです。男女別比では、男性21.1%、女性55.8%と増加の一途をたどっています。
非正規の従業員は、雇用契約上の身分、正社員のように解雇規制が強く働くわけでもなく、非常に不安定で、期間満了による契約終了で紛争に発展するケースも増加しているところです。特に、経済面では低所得者層が多く、「有期雇用」ということが正社員との格差にもつながっています。経営の便宜上、有期雇用である派遣労働者の活用が促進されれば、非正規雇用の問題を一層深刻化することが懸念されると考えられます。
労務全般の助言と支援、リスク予防と対策を得意とする特定社労士
亀岡亜己雄さん(首都圏中央社労士事務所)
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