「限定正社員」期待と懸念
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ユニクロが1万6千人のパートを「地域限定正社員」に
先日、ユニクロが1万6千人のパートを「地域限定正社員」とする旨が報道が大きくなされました。現在すでに「限定正社員」と同じような雇用形態を採用している企業はいくつもありますが、現政権で「限定正社員」導入をめぐる議論がなされていることから、注目を集めています。今回は、この「限定正社員」の期待と懸念について考えてみます。
前提として、そもそも「限定正社員」は法律上の用語ではなく、その定義も一様ではありません。ここでは、「非正規社員と正規社員の中間の雇用形態で、期間の定めがなく、労働内容や地域が限定された社員」とします。
第一に雇用の安定。待遇やキャリアアップの面でも期待される
まず、労働者側が「限定正社員」に期待する第一は、雇用の安定ではないでしょうか。期間の定めがある契約の場合、次の更新があるのか無いのか、不安がつきまといます。そのような雇止めへの心配がなくなります。また、賃金その他の待遇面についても非正規に比べると上がる可能性が高く、期待が持てるでしょう。残業や異動が正社員よりも少ないというメリットもあります。
さらに、キャリアアップの面からは、正社員への道が広がるかもしれません。というのも、非正規から限定正社員、そして正社員というように段階を踏むことができるからです。その意味では、労働者の多様化する生活スタイルにマッチしたキャリアアップも可能となります。キャリアの断絶、専門性が身につかない、といった非正規社員が抱える問題の解消にもつながるでしょう。
また、企業側にも期待があります。それは、優秀な人材を失わなずにすむこと。なんらかの理由で仕事を辞めざるを得なかった従業員でも、「限定正社員としてなら」ということで離職に至らないケースも増えるのではないでしょうか。
「限定正社員」を悪用するブラック企業が解雇を正当化?
しかし、一方で、懸念もあります。最も大きな懸念は、「限定正社員」を悪用するブラック企業が出てくるのではないか、という点です。今の法律では、企業は、仕事がなくなったからといって簡単に正社員を解雇することはできません。正社員を減らし、「限定正社員」を増やすことによって、「職場がなくなった」「仕事がなくなった」等、当初の労働契約を理由に解雇が正当化される事案が増えるかもしれません。
今、「限定正社員」が注目されるのは、「雇用の安定」と「雇用の流動化」という一見すると相反する議論の中心に「限定正社員」が置かれているからです。雇用の流動化を図るために解雇をしやすくする、という方向ではなく、あくまで労働者のため、それがひいては企業のため、といった視点で「限定正社員」を考えることが必要です。そうすれば、「限定正社員」が雇用の安定と流動化の双方に資することになると考えています。
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