スカイマーク新制服、労組要請は妥当?
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「客室乗務員連絡会」が国に対して要請書を提出
航空会社スカイマークが、新型機就航キャンペーンの一環で客室乗務員(CA)に着用させる制服(ひざ上約15㎝のミニスカートワンピース)をめぐり、航空会社12社のCAでつくる労働組合は、「保安業務への支障」と「セクシュアルハラスメント」の2つの観点から問題があるとして、国に指導を求めています。
労働組合に参加するCA約1000人でつくる「客室乗務員連絡会」は、「しゃがむと人目を気にするため作業しづらい」「緊急時にシューターで降りる際、肌の露出が多く負傷しやすい」「女性を商品として扱うデザインで、性的嫌がらせを誘発し機内の秩序を乱す恐れもある」と指摘。国土交通省と厚生労働省に対して2月下旬、ミニスカートの制服をやめさせるよう指導を求める要請書を提出しました。
同社広報部は「スタイリッシュにこだわったデザインで、丈が短いとは思わない。保安上も法律上も問題ないと考えている。着用を予定しているCAの承諾も得ている」とコメント。国交省航空局は「保安業務に支障がないか定期監査などで確認する」とし、厚労省雇用均等政策課の担当者は「セクハラを防ぐ雇用者側の義務に違反していないか検討する」と話しています。
「企業の社会的責任(CSR)」から鑑みれば労組の要求は妥当
この問題に関して、「企業の社会的責任(CSR)」から鑑みれば、労組の要求は妥当なものではないかと考えます。なぜなら、CSR活動でいう「人権」の取り組みに、ハラスメントや差別の防止、安全な労働環境の確保等が含まれるからです。
まず航空事業主には、あらゆる事故・トラブルの未然防止に万全を期す義務があります。事業を通じて「安全」「定時運行」という二大責任を果たし、顧客の信頼を獲得しなければ、永続することはできません。実際、同社の会社概要にも「当社は『安全を第一に』考える経営理念のもと、経営者をはじめ社員の一人一人に至るまで、安全運航に対する取り組みを最優先としています」と掲げています。それにも関わらず、乗客乗員の安全を守るCAに対し、安全性や作業効率よりも話題性を優先させた制服着用を導入する大義は見い出せません。社員の安全と健康の確保、快適な職場環境づくりは、企業活動の基盤です。
経営側のリスク管理意識も問われることに
この制服の安全性・機能性が客観的に検証され、担保されない以上は、労組の要求も当然の意見であるかと思われます。また、同社は国内線CAの職務定年を「38歳まで」と定めていること、この制服着用は「20代CAを前提」としていることから、女性の職場でありながら、ダイバーシティ、とりわけ女性に対する人権意識が希薄な企業風土もうかがわれます。
同社は、国内線市場に新興キャリアとして参入し、今までにない工夫を凝らすことによって競争を生み出し、利用者便益の向上に資することを目的に設立されたようです。今回の奇抜なパフォーマンス要素の強い制服戦略は、航空法第1条において「安全第一」を使命とする航空会社としては、航空事業の根幹に関わる部分に対する経営側のリスク管理意識も問われることにもなるでしょう。「何か問題が起きてから」では許されません。
豊富な経験と細やかな対応で頼れる人事・労務の専門家
大東恵子さん(あすか社会保険労務士法人)
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