大手のベア実施が中小企業へ与える影響
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大手企業は続々と給与のベースアップを発表
「ファミリーマートがベア5千円。イトーヨーカ堂がベア実施へ月2千円台で検討。トヨタがベア2700円で決着。ゼンショーがベア3500円。富士通、NECがベア2千円。セガサミー全社員に1.3%のベースアップを実施。ローソン12年ぶりベア実施と組合に回答」
大手企業が続々と給与のベースアップを発表しています。餃子の王将に関しては、一律1万円のベースアップを発表しました。一部企業がベア見送りとしたところ、業績が改善したのに賃上げを実施しない企業に政府は苦言を呈し、政府が進める経済の好循環に非協力的ということで、経済産業省からは何らかの対応があるとしています。
中小企業でも業績が改善され、賞与や賃金見直しがされているところもありますが、長期的に見れば、やはり先行き不安からベースアップは行わないというところも多くあります。
ちなみに、ベースアップは労使交渉で決まる賃金上昇額・上昇率から定期昇給分を除いたものを指します。賃金ベースそのものを全体的に底上げするもので、高度成長期の物価上昇に定昇だけでは対応できないとして導入されました。
最近の雇用形態の多様化に伴い、成果主義型の導入など賃金制度の見直しが進み、労使交渉も労働組合主導での業界単位から各企業の交渉が重視され、ベアの概念をなくした企業も多くなっていました。
ベアに消極的な中小企業。大手との企業間格差がさらに拡大
一方、ベースアップと混同しやすいのが定期昇給。定期昇給は、年齢や勤続年数に応じて賃金額が増額するもので、入社から定年退職までの平均的な賃金の推移を考慮し「賃金カーブ」が設定されるのが通常です。
今回は、ベースアップ+定期昇給で月額1万円増額となる企業もあるなど、企業間での差が大きいようです。ここまで大手企業が一斉にベアを復活させ給与相場を引き上げると、企業間格差はより大きくなり、中小企業には優秀な人材が集まらず、益々業績アップが厳しくなります。
県経営者協会のアンケートによると、中小企業での賃金見直しは、年齢や勤続年数に伴う「定期昇給のみ」が42.9%で最多。「据え置き」も19.3%を占めています。定期昇給に加え、賃金カーブ全体を底上げする「ベースアップ」も行う企業は7.6%にとどまり、4月からの消費税引き上げによる景気悪化を心配し、大手企業ほど積極的に賃金見直しを行うというわけにはいかないというのが実際のところでしょう。
賃金アップは人材採用にも影響が大きく、昨年後半から、大手企業の求人募集に人材が流れているため、中小企業での求人が芳しくありません。「仕事はあっても人手が足りない」。そんな中小企業の困っている様子が目に浮かびます。
IT業界を元気にするSE出身社労士
成澤紀美さん(社会保険労務士法人スマイング)
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