向精神薬依存を克服するには?
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安易に薬を処方する医師に問題がある?
向精神薬依存の話は、一筋縄ではいきません。それは医師と患者、あるいは医師の間においても考え方に温度差があり、人によっては強い思い込みがあるからです。まず、述べておきたいのは、医師の姿勢の問題です。向精神薬依存には「安易に薬を処方する医師に問題があるのではないか?」とあります。安易に薬を処方したり、患者の要求に対して言われるがままに処方したりする一部の医師にはいくらかの問題があるでしょう。しかし、現実にはできるだけ余計な処方はしないように心がけながらも、薬を使わない場合のデメリットの大きさを考慮し、薬を処方している医師も多いように思います。
実際この半世紀、精神医学の世界が開かれるのに薬物治療の進歩が与えた影響は計り知れないものがあります。向精神薬依存の問題は、その進歩の影に隠されてきた弊害への反省でもあります。
改善が「見える」時点ですぐに薬をやめると、症状は再燃
向精神薬依存について考えるには、依存と治療上の必要性の違いについて理解しなければなりません。向精神薬は、必要性があるという判断に基づいて処方され、症状が改善されます。ただ、改善の初期段階では、薬の効果によって症状がカバーされているにすぎません。一般薬で言えば、風邪をひいて熱が出たときに解熱剤を飲むと熱が下がりますが、風邪はまだ治っていません。それと同じことです。
改善されたように「見える」時点ですぐに薬をやめると、症状は再燃します。これは当たり前のことなのですが、それをもって「依存しているのでは?」と考える人もいます。しかし、依存ではありません。薬で症状がカバーされている間に生活習慣や、自分の考え方を変えたりして、病気のもとになっているストレスを減らす努力をしなくてはならないのです。そうすることで根本的な改善がなされ、薬をやめていくことができます。
身体的依存よりも精神的依存が問題。医師と患者との協力が不可欠
さて、純粋に向精神薬依存について考察するならば、向精神薬のごく一部の薬においては身体的依存があるように思います。一昔前に睡眠薬として使われていたフェノバール系薬物、そして、今話題のベンゾジアゼピン系薬物です。「抗うつ薬にも依存性があるのでは?」などと言われる人もいますが、抗うつ薬にあるのはSSRIというジャンルの薬に離脱症状の可能性があるだけで、依存があるわけではありません。フェノバール系薬物については、本当にやむを得ない場合を除いては処方されることは少なくなっています。
しかし、ベンゾジアゼピン系薬物の判断は難しいものがあります。この薬の最大の問題は、身体的依存よりも精神的依存にあるように思います。大部分の人は最終的に何の問題もなく薬を手放します。ただ、ごく稀に、その薬の効果ゆえに手放せないという精神的依存に陥ります。薬物依存から脱するには、自助グループへの参加によって断薬への動機づけを高めたり、医師の協力のもとベンゾジアゼピン系薬物を別の種類の薬に置き換えたりしなければなりません。
そして、それ以上に目を向けるべきなのは、薬によってカバーされている不安や感情コントロールの未熟さの問題です。実際には、こうした問題を克服できないまま、その一方で薬の効果が大きいがゆえに薬を手放せないのです。このような問題に取り組むには時間がかかり、自分と向き合うことが必要です。それは容易なことではありませんが、向精神薬依存を克服するためには医師と患者が協力し合うことが求められるのではないでしょうか。
“心の医療”のプロ
泉和秀さん(いずみハートクリニック)
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