労働者派遣制度の再改正は労働者に不利?
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派遣最長3年、見直しを決定
2014年1月29日、労働政策審議会は越年していた労働者派遣制度の見直しに関する報告書の建議を行いました。報告書での改正のポイントは、「(1)政令26業務と自由化業務などの業務区分の廃止」「(2)派遣労働者の就労期間の上限を3年に限定」「(3)派遣先の受け入れ期間の上限を3年に限定」「(4)特定派遣事業を一般派遣事業と同様、届け出制から許可制に一本化」などが主要な変更点となっています。そして、(2)の場合、派遣会社は3年超の派遣労働者に対して、「派遣先への直接雇用の依頼」「新たな派遣先の提供」「派遣元での無期雇用化」などの雇用安定措置を講じることとし、無期雇用の場合は上限を適用しないとしています。また、(3)では派遣先企業は労働組合などの意見を聞いた上で、同一業務の3年間の派遣継続を可能にすることも定められています。
この内容で改正が行われた場合、その労働者は同一の組織単位で3年以上就労する場合は、派遣先で直接雇用されるか、派遣元で無期雇用される必要があり、自分の働き方について考えなければなりません。また、同じ派遣元から別の派遣先に行った場合でも、改正された労働契約法によって有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、派遣先は無期雇用化しなければならなくなっています(労働者の申し込みによる)。
「派遣労働者の保護」に向けて課題は多い
この改正によって、3年ごとに労働者を入れ替えれば同じ職場で派遣を使い続けられる、という意見もありますが、現状でも26業務(現行28業務)であれば派遣を使い続けられる状況となっており、改正されれば、派遣元も派遣労働者も同一の組織単位での期間制限明確化され、本改正の再改正論議の原点である「わかりやすい派遣法」を実現するものとなっています。
しかし、実際の派遣労働の現場から見て、まだまだ問題点も残っています。特に 「平成24年改正法」についてです。この法律は民主党政権で成立したものですが、「日雇い派遣禁止」や「離職後一年以内の派遣受入れ禁止」など、労働者の気持ちや地方の現場などのことを全く考量していない規制が存在しており、業界団体からも規制の見直しを要望していました。しかし、今回の報告書では「見直しについて引き続き検討」とされています。
今後はこの建議に沿って法改正案が国会に提出、審議されることとなりますが、今回の改正を機に、名実ともに「派遣労働者の保護」となるような制度となることを心から願っています。
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