日本史の必修化で愛国心は育まれるか?
- カテゴリ:
- スクール・習い事
非常に広い意味を内包する「愛国心」という言葉
はじめに、「愛国心」という言葉について考えてみたいと思います。「広辞苑」第六版では、「自分の国を愛する心」と解説が付されています。
愛国心を育むために高校で日本史を必修にする、というのですが、非常に広い意味を内包する「愛国心」という言葉が「国を護るために命を捧げる」ことに限定されている気がしないでもありません。特に太平洋戦争の末期、特別攻撃などで若い命を散らした人々に対して「国のために喜んで命を投げ出したことは『美しい』ことである」という論調をみる時、かえってそれは尊い命を失われた人々に失礼にあたるのではないかと私は考えています。
高校での日本史の必修化は愛国心を育むことには直結しない
「戦艦大和ノ最期」(吉田満)、「指揮官たちの特攻」(城山三郎)、そして「きけわだつみのこえ」といった書物から教えられることは、戦時下、「死ぬことが避けられないなら、自ら進んで」という考えの人がいた一方、不条理な運命を強制され、そのことに対してどう自らの折り合いをつけるべきかと思い悩み、苦しんだ人も多く、こもごもの思いがあったのだということです。そのことを思いみず、いたずらに「愛国心」の一面のみを言い募るのは、「教育」とは遠い行ないではないでしょうか。
そして、高校での日本史の履修を必須とすることで、愛国心なるものが育まれるのかと言えば、それは「否」であると考えます。どのような内容でも、強制して教えこむのでは受け手の身にはつかないことが多いですし、それが「心」の問題であるならばなおさらです。
自国の歴史を知ることは世界で活躍するための基礎
また、かつて必修である世界史を、大学受験優先のためにきちんと履修させていない高校が多数に及び、大問題になったことがありました。大学入試制度も改変される過程ではありますが、昨今ますます「大学合格実績の向上」を至上命題とする傾向が強まっている高校の現場では、対応に苦慮することが予想されます。
もっとも、「日本史の必修化」自体については良いことと思います。難関大学を志望する高校生たちが、倒幕の主体が薩長であることさえ知らぬまま大学生になろうとしている現実を目のあたりにしているからです。自国の歴史をきちんと知ることこそ、世界で活躍するために基本となる教養の礎でしょう。そのためには公正で押しつけにならない真の教育がなされるよう望むのみです。
関連するその他の記事
最近人気の金継ぎとは?サステナブルなだけじゃない、金継ぎの魅力を紹介
萩原裕大さん
金継ぎで”思い”を未来に引き継ぐ漆芸家
発達障がいのある子の学習指導において配慮すべきこととは?
長谷川満さん
子どもの自信とやる気を引き出す教育のプロ
10月は健康強調月間。健康法「涙活(るいかつ)」のすすめ
吉田英史さん
「涙活」でストレス解消に導く感涙療法士
コロナ太りの人増加中?太りにくい簡単満足レシピを紹介!
齋藤聡子さん
女性のライフスタイルを彩る料理研究家