120年ぶりの民法改正で個人保証による自己破産は撲滅へ?
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保証契約は「頼んでくる人」ではなく、債権者との間で結ぶもの
今日の社会経済情勢に合わせるために、現在、法務省を中心に、民法の債権法について抜本的に見直し、改正しようという審議が進んでいます。その中に「保証」に関する規定の改正も含まれています。
保証は、民法上、他人の債務をその他人が履行しない場合に代わりに履行する責任のことをいいます。通常は、債権者との間で保証契約を結ぶことで責任を負うことになります。 保証といえば、「迷惑はかけないから」といって知人、兄弟などから頼まれて「保証人になる」といったイメージがあると思います。保証契約はあくまでも 債権者との間で結ぶもので、頼んでくる人と結ぶものではありません。また、その契約の内容は先に述べたとおり「他人が債務を履行しない場合に代わりに履行する」ことですから、実は保証契約を結ぶこと自体、「迷惑をかけられるかもしれない」ということを契約の内容にしているのです。
こんな勘違いもあってか、他人の保証人になっていたら、急に多額の保証債務の履行を迫られてしまい、そのために破産せざるを得なくなってしまったというケースも少なからずあります。そこで、今回の民法改正の審議では、このような「保証人保護のための方策」も検討されています。
「保証人保護のための方策」の具体的な内容は?
具体的には、「個人保証を原則として経営者に制限する」ことや、「債権者が事業者である場合、保証人になろうとする人への説明義務や情報提供義務を課すこと」、さらには「裁判所が保証債務の額を減免することができる」といった制度などです。 これらが実現されれば、現在問題になっている「多額の保証債務による破産」という事態は、ある程度、防ぐことができるのではないかと思います。
しかし、現時点では、この保証人保護のための方策は「引き続き検討する」にとどまっており、確実に実現されると決まったわけではありません。これは、「経営者」に含まれる人の範囲がはっきりしないといったの立法上の問題や、これらの方策をいきなり実現してしまうと中小企業などへの融資が現実的に難しくなってしまう可能性があるなど、さまざまな問題点が想定されているからです。また、これらの方策で経営者以外の破産は一部防ぐことができたとしても、経営者同士で頼み合って保証人になってしまうようなケースについては、今回の改正では十分保護されないことになります。
一人一人が「保証という制度に対する理解」を深めることが大切
そして、今回の方策で、個人保証が制限される対象は事業用の貸金などにとどまり、賃貸借契約上の債務の保証などは対象外となっているため、今回の改正でもすべての保証人が保護されるわけではないのです。
以上から、このたびの民法改正が実現しても、すべてが解決するということにはなりません。社会全体が、「保証人に頼らない融資制度」というものについて、もっと考えていくことや、国民一人一人の「保証という制度に対する理解」を深めていくことが大事なのではないでしょうか。
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