今さら感ある「さん付け運動」の効果
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「さん付け運動」で風通しの良い社風を目指すシャープ
経営再建中のシャープの「さん付け運動」が取り上げられて話題になっています。しかし、「今さら、そんなことをしても…」という冷やかな声も聞えてきそうです。実際に「さん付け運動」は真新しいことではなく、既に導入している企業も多くあります。「シャープが抱える問題の本質は、そういうことではない」と厳しく指摘する専門家も一部にいます。
それでも、シャープの高橋興三社長は、経営トップの判断に「ノー」と言えない雰囲気が、経営危機を招いた液晶事業への巨額投資につながったと反省し、自ら旗振り役をしています。現場の声を組織の「上」に直言できる風通しの良い社風を目指す、とのことですので、今後の変化に期待したいところです。
「さん付け運動」が、目立つようになったのは80年代終わり頃といわれています。当時、経済同友会は、終身雇用制度の崩壊とともに年功序列制度から実力主義に変っていく中で、「労働力の流動化」が進むことを懸念していました。会社が構造改革を迫られる中で、経済同友会が「上下関係をスムーズにするようなマナー」として積極的に「さん付け運動」を提唱したことで少しずつ広まり、現在にいたっています。
業績との因果関係は「?」。しかし、目に見えない効果も
「さん付け運動」をしている会社は業績が良くなるのか、という視点で見ると、そこに因果関係があるとは断定できませんが、目に見えない効果が多くあります。例えば、以下のようなことが挙げられます。
1、役職・年齢に関係なく自由に意見を言えるようになる。
2、職場の雰囲気が柔らかくなり、ギスギス感がなくなる。
3、役職の降格などにも対応しやすくなる。
4、マナーの向上につながる。
「さん付け運動」により、自由に意見を言えるようになれば、結果的に上層部の誤った判断に対して「No」を突き付けられることで無駄を省くことができ、大きな失敗による損失を防ぐこともできます。また、会議の際に年代の違いなどによる意見の食い違いがあったとしても、お互いを尊重し合って話し合うことができ、結果的に良い結論が導かれることもあるでしょう。
さらに、降格人事、役職定年制を行う企業が増えている中で、役職をつけて呼ぶのは不都合なことも多々あります。今回の報道をきっかけに、まだ導入していない企業は「さん付け運動」について話し合って検討してみるのも良いかもしれません。
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