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食材偽装、利用を証明できない人にも返金すべき?

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メニュー表記と違う食材を食べた人への阪急阪神ホテルズの返金対応

食材偽装、証拠が無くても企業は返金すべきか?

株式会社阪急阪神ホテルズ系列のレストランでメニュー表記と違う食材が使われていた問題で、各レストランから利用客への返金がなされています。レシートや店の記録を確認して、その料理を食べたと確認できた利用客に料金を返還するとのことですが、レシートを捨ててしまったという人も少なくないでしょうから確認作業は難航を極めると思われます。

また、「返金に期限は設けていない」ということですが、食材を偽装した期間は平成18年からとのことなので、偽装が始まった初期の利用状況を確認できるのかという時間の壁も立ちはだかります。

「裁判に負けない」と「法的責任がない」はイコールではない

このような事件が発生すると、企業は顧問弁護士に法的見解を求めて対応を検討するのが一般的です。私なら以下のように考えます。

まず、法的責任を認める必要性の有無については、損害賠償を請求する側に自らに請求権があることを証明する責任があります。過去の利用実績を証明できなければ仮に訴訟を起こされたとしても賠償を認める結論にはならない、ということを説明するでしょう。

ただ、それで良いのかという側面は当然あります。それは、「証明できないという理由で裁判に負けない」というだけのことで、「法的責任がない」と厳密な意味でイコールではないからです。つまり、本当は賠償すべきなのに相手が証明できないという理由で賠償しないのは、かえって不正義ではないかという疑義を残すということです。

一般顧客相手に仕事をしている場合、支えるのは社会的信用です。仮に裁判に勝ったとしても、不正義な勝利であれば、社会はその企業を信用することはないでしょう。つまり、今後の企業活動を考えると、多くの消費者が納得いく形で事態の収拾を図るというのが企業側に課せられた命題になるため、その方法を検討すべきと進言します。

クレーム対応はファン獲得のチャンス。企業の姿勢が問われる

2002年に大手スーパーマーケットチェーン「西友」が外国産牛肉の偽装事件を起こしたときには、証拠がなくても返金に応じるという対応をして、札幌元町店では当該偽装を行った期間の売り上げの3倍にも及ぶ返金を余儀なくされた、ということがありました。レシートや店の記録を確認した上での返金は、リスク管理のためにはやむを得ない面はありますが、面倒な立証手続きに嫌気が差して、そもそも返金を求めない人も少なくないと思います。阪急阪神ホテルズは先述の対応を選択しましたが、この方法が果たして一般消費者の納得を得られるのかは未知数です。

企業にとって「クレーム対応はファン獲得のチャンス」と言われることがあります。クレームに対して予想以上の対応することで、好感した顧客がそのことを肯定的に周囲に話してくれることもあるからです。

それでは、本件ではどうすべきだったのか。正解を見つけるのは難しいことではありますが、被害に遭ったのは阪急阪神ホテルズの既存顧客であった可能性が高いため、返金ではなく、顧客に対するお詫びの趣旨で格安の飲食サービスを提供するといった方法もあったのではないかとも思います。

弁護士と中小企業診断士の視点で経営者と向き合うプロ

舛田雅彦さん(札幌総合法律事務所)

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