「新型うつ病社員」への企業ができる対処法と予防策
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「新型うつ病」とは
現在、多くの企業においては、うつ病を中心とするメンタルヘルス問題を課題としており、その対策について多くの悩みを抱えています。その中でも最近特に注目を集めているのが「新型うつ病」です。「新型うつ病」とは、うつ病と同様に不眠や気分の落ち込みの症状により仕事はできなくなってしまいますが、職場を離れると元気になって、自分の趣味や好きなことには活動的になるという、従来のうつ病とは大きく違っているタイプの心の病です。
「新型うつ病」は、若年層に多いわけですが、何でも会社や他人のせいにする傾向が強いのが特徴です。また休職中であっても悪気もなく海外旅行に行ってしまったりするので、どこの企業もマネジメントには大変苦労しているのが現状です。
企業側としては、まずは、人事労務関連の担当者だけでなく、管理職や上司にあたる人にも新型うつ病の特徴というものを正確に理解してもらい、従来のうつ病対策のマニュアル型の対応ではケアできない部分を社内外の研修などで補っていくことが望ましいです。
企業側の対処法としては、大きく分けると「職場でのコミュニケーション」、「主治医の意見の尊重」と「就業規則の整備」という3つのポイントがあります。
「新型うつ病社員」に対処するための3つのポイント
1、職場でのコミュニケーションに工夫をこらす
とにかく些細な言葉の一つ一つに過敏に反応するので、言葉を選んで本人のプライドを傷つけてしまうような発言をしないようにすべきです。本人の辛い気持ちなどを含めて話をよく聞いてあげることができれば、会社に対して攻撃的になって権利ばかり主張するような行動をおさえることができる場合もあります。また、何気ないやり取りの中でも感謝の気持ちを伝えたり、ちょっと落ち込んでいるときに気の利いた言葉をかけてあげるなどコミュニケーションにちょっとした工夫をこらすだけでも効果はあります。
2、無理に仕事をさせずに、主治医の意見を尊重する
新型うつ病については、単なる甘えではないかという現場の声もあり、無理に仕事をさせたりする傾向にあります。しかし、安全配慮義務の観点からも問題になる可能性があるので、まずは主治医の診断をもとに、その意見を尊重し、一般の病気と同じように就業規則の休職の規定に従って運用することとしてください。状況によっては企業側の産業医やカウンセラーにも協力してもらうようにします。
3、就業規則で予測されることを規定する
新型うつの傾向にある人の予測される行動について、服務規程などで厳しく制限をかけたり、わかりやすい言葉でルールブックを作成するなどして、周囲に迷惑をかけてはいけないということを強く認識させることも大切です。また休職中は、労働することを免除されているのは確かですが、だからといって海外旅行に行ったりするのを認めてしまってはいけません。休職中は、療養してもらうことが目的なので、たとえば就業規則の中で、「休職期間中は海外旅行に出かけてはならない」といった旨を規定するというのも対処策の一つです。
最後に企業側の予防策としては、採用時の見極めが鍵となってきます。企業が採用面接でいくら意識しても、新型うつ病の傾向があるかどうかを見極めることはかなり難しいですが、さざまざな適性検査やストレス耐性のチェックができるツールなどを上手に活用して、新型うつになりやすい人を採用しないことが一番の予防策です。もちろん企業側に労働関連のコンプライアンス違反があったり、職場の人間関係が希薄だったり、職場内に大きな派閥関係があったりするような職場においては、新型うつ病になる可能性を高めてしまいます。まずは自分たちの職場環境に問題がないかゼロベースで見直してみることも大事な予防策といえるでしょう。
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