社会保障「全世代型」へ 世代間格差は解消されるか?
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若い世代が将来に夢と希望を抱くことができる社会保障制度へ
現在の社会保障制度の土台は約50年前の高度経済成長期に作られました。当時、経済的な失速や急激な高齢化は想像もしていなかったでしょう。現行の制度は、今の日本の社会や経済情勢では維持できないものになってしまいました。1965年は現役世代9.1人で65歳以上の高齢者1人を支えていましたが、2012年には2.4人で、2050年にはほぼ1人で支える必要があります。また、現在の社会保障費の大半は高齢世代に充てられています。一方、費用の大半は現役世代が負担しており、以前より世代間の不公平さが指摘されていました。
このような状況を踏まえ、このたび社会保障制度改革国民会議(制度の改革について審議するため内閣に設置)で、今後は「全世代対応型」の社会保障制度への転換が提言されました。高齢世代に偏っていた給付面では、子育て支援を中心に将来を担う世代から高齢期まで一貫して支援を行うようになり、また、負担面では高齢世代でも所得が高い人からは徴収するといったように、年齢に問わず負担能力に応じた負担を求めていく内容になっています。
とりわけ、子育て中の若い人たちが日々の暮らしに安心感を持ち、将来に夢と希望を抱くことができる社会保障を構築することによって、若い世代も納得して制度に積極的に参加できるようになることが重要と考えられています。
それでも世代間格差は解消されない
今後、社会保障制度を持続可能なものになするには、高齢者への負担増も一つの選択肢として避けられないものとなるでしょう。ただ、負担できる人と、そうでない人を明確に線引きできればいいのですが、果たして所得の高い人が本当に経済的に余裕のある人なのか、という疑問も残ります。所得は無くても財産があり、生活に余裕がある人も多く、反対に、所得が多くてもさまざまな事情で生活が苦しい、ということもあるでしょう。どのように判断するか、意見の分かれるところです。
また、現在の社会保障制度が確立するまで、今の高齢者は自分自身の保険料を支払いながら親の扶養を行っていたこともあり、今と昔とでは社会情勢が全く違うため「損得」を比べることはできない、という見方もあります。したがって、「全世代対応型」に転換されても、すべての立場の人が「世代間格差が解消された」と感じることは難しいでしょう。他にも、自営業やサラリーマンの世代内格差も問題視されていますので、今後の改革の行方に注目です。
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