脱毛は儲からない?美容サロン経営の構造的限界とは
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最近、大手脱毛サロンの閉店が相次いでいます。そして、その背景には、業界構造そのものの限界が存在しています。広告に巨額の費用を投じて集客しながらも、なぜ多くのサロンが持続可能な経営を実現できなかったのか。その本質に迫ることが、美容業界に携わる一人としての社会的責任であると感じています。
私はかつて、美顔・痩身・脱毛の3つの柱で月商15億円を上げていた大手総合エステサロンに勤務していました。そこで最初に教えられたのは、「脱毛の契約は取るな」という一言。この言葉は、美容サービスの提供効率と収益性の観点から脱毛が不利であるという現実を端的に示していました。
たとえば、美顔や痩身の施術は、パックやEMS機器使用中に他の施術を並行して行えるため、1人のスタッフが複数の顧客を同時に担当できます。これは美容室でのカラー放置中のカットと同様の考え方です。一方、脱毛は安全管理の観点から、常に1対1での対応が求められます。医療行為ではないにせよ、機器の使用により身体に直接作用するため、技術的にも慎重な施術が必要です。
この違いが、脱毛サロンの人件費や回転効率に大きく影響します。1店舗あたりのスタッフ数が限られている中、1人は常に施術に専従し、残りのスタッフが広告から流入する新規顧客へのカウンセリングと契約に対応します。つまり、新規獲得と契約が経営の生命線であり、広告費への依存度が極めて高い構造が形成されているのです。
広告競争はやがて価格競争へと発展し、薄利多売の構造に陥ったサロンは体力勝負を余儀なくされていきます。紹介制度や顧客満足度を軸とした自然な集客が機能していた時代には、単価が低くても持続的な成長が可能でした。しかし現代は、オンライン広告への過度な依存と、飽和した脱毛市場により、利益を圧迫される企業が増えています。
さらに問題なのは、経営層と現場スタッフとの温度差です。真摯に顧客と向き合っていたスタッフが、突然の倒産を報道で知るというケースも珍しくありません。これは、美容業界における労働環境と情報共有の在り方にも一石を投じる問題です。
美容業界は今、「広告依存からの脱却」と「信頼に基づく持続可能な経営」が強く求められています。公共性の高いサービスとして、お客様の安心と安全を守るには、派手な戦略よりも、着実な顧客関係の構築と、現場に根差した経営判断が必要です。
これは一業界の話にとどまりません。「目先の利益」ではなく、「信頼と継続性」に重きを置いた経営が、これからの時代にすべてのサービス業に共通して求められる視点なのではないでしょうか。
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