副業はいくらから確定申告が必要? 在宅副業で認められる経費、フリマアプリの収入は?
コロナ禍で副業を始める人が急増し、今年は確定申告の必要が出てきた人も多いようです。会社員の場合、年末調整で納税手続きを行ってもらえるので、税金について意識する機会は少ないもの。いざ、申告書類を前にして「少額でも申請は必要?」「所得の種類は?」など、さまざまな疑問がわいている人も多いのではないでしょうか。会社員の副業に関する確定申告の疑問について、税理士の熊谷亘泰さんに聞きました。
副業の所得が20万円以下でも確定申告が必要なケースも。令和2年分の確定申告から書式変更や青色申告の特別控除額の変更もあるので注意を
Q1:副業による収入があった場合、いくらから確定申告の必要があるのでしょうか?
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原則として、本業で年末調整を受けていて、副業の「給与収入」と「事業所得」「雑所得」などの所得の合計が年間20万円を超える人は確定申告を行う必要があります。
ただし、本業の給与収入が2000万円を超える人や、医療費控除やふるさと納税などの還付申告をする人は、副業の所得の金額にかかわらず確定申告が必要です。
また、副業の報酬から所得税が源泉徴収されていて、納付すべき所得税の額を上回っている場合は、確定申告をすることで所得税の過払い分が返金されます。この場合、副業の所得が20万円以下でも確定申告を行うメリットがあります。
なお、副業が少額で確定申告が不要なケースでも、注意しておきたいのが住民税です。住民税には所得税のような〝20万円ルール〟はなく、すべての所得にかかります。通常、確定申告を行えば、税務署から市区町村に所得が通知されるため住民税の申告は不要ですが、確定申告を行わなかった場合、住民税の申告が別途必要になることがあります。
Q2:確定申告書の「所得」の欄にはさまざまな種類がありますが、「事業所得」「雑所得」の違いは?一般的な会社員の副業の場合、どれに該当するのでしょうか?
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「事業所得」「雑所得」の区分に明確な基準は定められていませんが、ポイントは「事業」といえるか否かという点にあります。「事業所得」は、営利性があり継続的に営んでいる事業、つまり単発で終わる仕事ではなく、片手間ではない時間と労力をかけている、メインの収入になっているかどうかが判断材料となります。
一方、「雑所得」は、「事業所得」「給与所得」「不動産所得」など9種類ある所得のうち、いずれにも該当しない所得を指します。例えば、会社員が休日だけクラウドソーシングやアフィリエイト記事の執筆、Uber Eats配達員などの副業を行っているような場合は「雑所得」とみなされる可能性が高いでしょう。
令和2年分の確定申告書からは書式が変わり、「雑所得」の区分に「業務」という欄が追加されています。事業というほどの規模ではない取引による所得、すなわち会社員の副業の多くはこの「業務」に該当すると考えられます。
Q3:副業で経費を計上することはできるのでしょうか?自宅を作業場として副業を行っていた場合、家賃などは経費として認められるのでしょうか?
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副業が「事業所得」「不動産所得」「雑所得」であれば、業務遂行にかかった経費を計上することができます。自宅兼作業場の場合、賃貸物件の家賃や光熱費などの家事関連費は、業務遂行上、直接必要であったことが区分できる場合、必要経費として認められます。
例えば、家賃であれば自宅の中で仕事場として使用している面積の割合、光熱費であれば使用しているコンセントの数や使用時間の割合などで算出する方法があります。
インターネットを使う副業ならスマホやWi-fi利用料などの通信費も経費として認められます。プライベートと兼用している場合、使用頻度の割合で算出するのが一般的ですが、例えば副業専用のスマホなどがあれば事業用と判断できるので全額経費として計上できます。
上記のようにプライベートと按分する経費は、法律で基準が定められているわけではなく、自分で按分割合を設定する必要があります。税務署から尋ねられたときに、客観的な計算に基づいて説明できるよう、基準を明確にしておくことが大切です。
Q4:副業として行っているネットオークションやフリマアプリの収入も申告しなければいけないのでしょうか?
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所得税法では、衣類や家具など生活用動産の売却は非課税とされているので、家庭の不用品の売却であれば申告の必要はありません。
ただし、貴金属や骨董品、生活用動産でもプレミアもののCDなど希少価値があり1点あたり30万円を超える値段が付くものは、課税対象になる可能性があるので注意が必要です。
また、ハンドメイド作品の販売や、仕入れたものを転売するなど、物品の売却が継続的・反復的に行われ、利益を得ることを目的としているような場合には、金額にかかわらず課税対象となる場合があります。
Q5:確定申告には青色申告と白色申告の2種類がありますが、会社員の副業で青色申告にした方が良いのはどのような場合でしょうか?
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青色申告は白色申告と比べて税制上の優遇措置を受けることができますが、そもそも青色申告ができるのは「不動産所得」「事業所得」「山林所得」のある人に限られています。そのため、「雑所得」では青色申告をすることができません。
事業所得として青色申告を行うためには、内容が事業的規模と認められることが必要ですが、副業を単発としてではなく、将来的に継続して行うことを考えている場合は、青色申告への切り替えを考えても良いでしょう。
青色申告には、主に以下のようなメリットがあります。
① 最大65万円の特別控除(※)を受けられる
② 給与所得等との損益通算ができる
③ 損益通算しても残った赤字を最長3年まで繰り越せる
④ 30万円未満の資産を取得した場合、一度に経費に計上できる
⑤ 家族への給与が経費にできる
※今年(令和2年分)の確定申告から、税制改正により正規の簿記、記帳による場合の青色申告の特別控除は55万円に引き下げられますが、e-Taxによる申告(電子申告)を行うと、引き続き65万円の特別控除が受けられます。
特に、開業初期はさまざまな経費が発生するため、損益通算できたり、赤字を繰り越せたりするのは大きなメリットといえます。
青色申告をするためには、開業日から2カ月以内、すでに事業を行っている場合は青色申告する年の3月15日までに、税務署に開業届と青色申告承認申請書を提出する必要があります。そして、帳簿付けの義務が発生します。
帳簿付けが正しく行われていなかったことが判明した場合、青色申告者としての承認が取り消されます。また、副業の開業届を提出した時点から、本業を退職しても失業給付の対象外となるので注意が必要です。
事業の規模によっては帳簿付けの負担の方が大きく感じるかもしれませんが、日頃から収支を意識しておくことは大切なポイントです。ご自身の働き方を踏まえて、今後の確定申告はどの方法で行うのが良いか、今一度考えてみてはいかがでしょうか。
公認会計士・税理士の資格を持つ経営コンサルティングのプロ
熊谷亘泰さん(公認会計士・税理士熊谷亘泰(くまがいのぶやす)事務所)
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