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若年層の死因第一位は「自殺」、気になるのは日本人が持つ〝他人に相談することへのためらい〟

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メンタル・カウンセリング

2020年10月の自殺者が2153人と、前年の同じ月と比べて40%近く増えていることが警察庁の集計で明らかに。単純に比較できないにしても、この数は、新型コロナの累計死者数2015人(11月24日現在)を超えていることになります。

厚生労働省が発表した自殺対策白書でも、年代別の死因順位をみると10~39歳の各年代の死因の第1位は自殺で、この傾向は20年間変わらないまま推移しており、若年層の自殺が依然深刻な実態が明らかになっています。
<参考> 自殺死亡統計の概況
芸能人の自殺報道やこうした統計の発表後には、必ず相談窓口の紹介がされますが、実際に生きづらい思いや悩みを第三者に相談する人は、そう多くはないようです。

メンタルヘルスの重要性が取り上げられ、スクールカウンセラーの配置や企業内のストレスチェックが義務付けられているとはいっても、日本では欧米ほどカウンセリングを受けることが日常に浸透しているとは言えないのが現状です。

何が悩みを打ち明けることをためらわせているのでしょうか。心の問題解決の第一歩のために必要なものは?心理カウンセラーの十川千惠美さんに聞きました。

「自分ファースト意識」の低さや「辛抱することは美徳」の精神が、第三者への相談の壁になることも。誰かに助けを求めるアクションを起こす、その行為が問題解決への第一歩に

Q:欧米では、日常の悩み事に対応してくれるかかりつけのカウンセラーの存在もあるほど、カウンセリングが浸透していると言われていますが、日本であまり一般的ではないのはなぜでしょうか?
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コロナ禍での海外の報道でも明らかになったように、欧米では日本ほど医療制度が整っていないために、病気になったときに誰もが手厚い治療を受けられるとは限りません。

そこで高い治療費や薬代のことを思えば、日常的にサプリメント商品を摂り入れたり、カウンセリングなどを受けて心身のメンテナンスをしたりということに抵抗が少ないとも考えられます。自分の心身の不調に対する自己管理の意識は、トランプ政権の〝アメリカ・ファースト〟で象徴的な、「自分が一番大事」という、日本人にはあまりなじまない考え方も関係するのかもしれません。

これに対して日本人の多くが気にするのは〝世間の目〟と言えるでしょう。また「辛抱することが美徳」という考え方が根強くあって、これほどグローバル化が進んでも、「明らかな病気の症状があるならまだしも、気持ちの問題で弱音を吐くのは恥ずかしい」「他人に自分の内面のことを知られたくない」と思う人が依然として多いのではないでしょうか。

そもそもカウンセリングという方法自体が欧米由来のものですから、同じく中国などから取り入れられた漢方ほども一般に受け入れられていないのは、しかたがないのかもしれません。

Q:カウンセリングを受けることに抵抗があるという人には、専門家への相談に対してどのようなイメージがあるのでしょうか?
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カウンセリングに対する日本人のイメージは、欧米人の日常的な〝メンテナンス〟の感覚と違い、「苦しさが増して、自分ではどうにもならなくなってから訪れるもの」というのが一般的のよう。そのせいか、家族など身近な人に促された人や、誰も相談できる人がいないという人が訪れることが多いようです。

本人は「それほど大した悩みではない」「このままでも構わない」と思っていても、「家族にこれ以上心配をかけられない」という思いから、すすめに従うということも少なくありません。

欧米のように夫婦で同じかかりつけカウンセラーにかかっていて、夫婦喧嘩のたびに相談に訪れるということは、残念ながら日本ではほとんどみられません。

また、カウンセリングのイメージとして、「特別な人が受けるもの」「経済的に余裕がある人が利用するもの」という意識があるようです。まずは「病気であるはずがない」とは思うものの、「病気でないなら『薬をもらっておしまい』ということにならないだろう。だから、どれだけの時間やお金がかかるのかわからない」「限られた時間内に悩みをわかってもらえるはずがない」という不安が先行するようです。

「一度も相談したことがない」という人を躊躇させている問題の一つには、医療行為や服薬を伴うもの、または何かしら病名などがつきそうな診療ならあまり疑問も抱かないけれど、薬も出ない傾聴などの行為には対価を認める習慣がない、ということもあるのかもしれません。

Q:一方で、幅広い悩み事がWeb上の相談サイトや無料の電話相談などに寄せられています。本当に相談が必要な人にも、こうした窓口は意味があるものなのでしょうか?
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自分の問題がある程度わかっていて、それに対する答えや助言も想像がつくと思っている人も多く、わかっていてもできないことに対して、「なるべくなら耳の痛いことは聞きたくない」というのは自然なことです。しかも多くの場合、自分の苦しみの原因は、別の誰かや環境のせいで、決して自分が悪いわけではないと思いたいはずです。そうした都合の良い解釈を一方的に聞いてもらいたい、同意してもらいたいという気持ちは誰でも持っているものです。

また、他人の相談内容を見て「自分だけではない」と安心したい気持ちもあります。漠然と不安である、同意してほしいと願う人にとっては、「どのような相談窓口でも有効でない」ということはありません。特に若い世代は経済的な負担に対する不安や、対外的に発信することへの自信のなさが大きいでしょうから、そこで必ずしも期待したような答えが見つからなくても、「アクションを起こした」というだけでも、十分意味があることだとは思います。

ただ、Web上や電話だけで自分の悩みを伝え、意味のある解決策を得ることは、そう簡単ではないことも知っておかねばなりません。

人は知らない誰かを判断するとき、無意識のうちに目に見える顔や全体の表情などからたくさんの情報を読み取っています。占い師の悩み相談が当たることも、エステや美容院で「何か心配事でもあるのですか?」と言い当てられるのも、占い師やエステティシャンが、表情や肌の状態など、その人が放つ微細なシグナルを見た目や触感からキャッチしているからです。

自分自身のことでも、「悩み事や苦しい思いを、うまく言葉にして伝える自信がある」という人は少ないはず。コロナ禍で対面が難しい状況ですが、シグナルをキャッチし、引き出し、理解してもらうためには、相談者がさらにその先へ進む必要があると思います。

Q:悩みごとがあっても「プロに相談するほどの悩みではない」と思いがちのようです。実際の相談現場では、どのようなことをするのですか?
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欧米では、かかりつけカウンセラーに対して、お互いに「ハーイ」といったあいさつから気軽にカウンセリングに入るようですが、日本では、はじめての予約を取るところから敷居が高い印象を持つ人が多いようです。当然ながら、その時点では相談者の問題について詳しく説明を求めることはありません。

カウンセラーにもよりますが、個人的には、事務的なこと以外でも、予約の時点で可能な限りの情報を出して、なるべく不安を取り除くように心掛けています。

相談者が心に抱えている問題をコップの水に例えると、すでにコップの半分以上が不安な気持ちで満たされていて、中にはちょっとしたきっかけであふれ出しそうな危険な状態の人もいます。コップの中身をこの場で空けて、少しでも軽くして帰れるようにすることが、カウンセラーの仕事の一つであると思っています。

そのために、それぞれのカウンセラーが経験に基づいて相談者の状態を観察、共感、理解し、サポートしながら相談者の考え方の癖を明らかにしていきます。

個人的には、話し出すのを待つというよりは、どんどん吐き出してもらうように働きかける手法をとることが多いかもしれません。

よくイメージされるような、静かで深刻そうというより、笑いが生まれやすい現場になることが多いですし、場合によっては泣き笑いのような状態になることも。自分で解決策を見つけやすくするために、こちらからいくつもの解決案を提示するようなこともあります。

勇気を出して踏み出して来た人が、次にもまた同じだけのエネルギーを携えていられるかわからない限りは、この一度の機会に全力を傾けるのみです。深刻な重い問題で心が満たされている人には、「時間ですからまた次の機会に」ということが難しいと考えられるからです。その一度によって解決できればベストですし、その判断の時間を設けるためにも、次回以降の予定を決めないこともあります。もちろんこれは、全てのカウンセラー、全ての相談者に共通する手法ではありません。

Q:自分の悩みごとを上手に整理できる人と、抱え込んでしまう人とでは何が違うのでしょうか?また、心の健康を維持するための方法とは?
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本当に苦しさが募り、生きる望みを無くして何もする気になれない、周囲の人も気付かないほど精神的に孤立しているような深刻な状態の人には、そもそも誰かに相談する気力さえありません。

真面目で繊細、何でも自己完結してしまい、一見悩み事などなさそうな人ほど、問題を抱え込んでしまうことは、芸能人の謎の自殺報道のたびに言われていることです。こうした人のほうが、誰より助けが必要なことは明らかなのに、自分から手を挙げてくれなければ気付きようがありません。

もっと「自分ファースト」に考えられれば、解決の糸口が見つかるはずですが、「苦しい状態から抜け出したい」「解決したい」「楽になりたい」という自分自身の意思が生まれてこなければ、どうすることもできません。

一方、問題行動ばかり起こしていて、心の混乱が収拾できないようにみえる人に対して、家族が危機感を覚えているようなケースでも、その人自身が意識の深層で、そうした家族の干渉を渇望しているということもあります。

たとえば、青少年期を過ぎた子どもが親に促されて相談に訪れる場合に、こうした傾向がみられ、子どもはいつまでも問題解決をしようとしないこともあります。いかに破壊的で歪んだものであっても、その人自身が幸せと感じることまで止めることは難しく、第三者の介入が必要で、しかも有効なのは、こうしたケースでしょう。

相性の良いカウンセラーとの出会いも大きな要素のひとつです。勇気を出して一度踏み出したなら、「思っていた感じと違うかも」となっても、病気に対するセカンドオピニオンのように、「自分の苦しみに寄り添ってくれるカウンセラーが必ずいる」と信じてあきらめないことです。

本来はあまりすすめられませんが、実際〝カウンセラー・ジプシー〟のような人も大勢います。できれば自分と同じような体験を持つ、あるいは同じような問題を解決に導いた経験が多いカウンセラーを見つけられればラッキーでしょう。

そして、ドキドキしながら予約の電話をしようとするときには、あなたの問題は解決し始めているのではないでしょうか。

十川千惠美

人生の幅広い悩みを解決に導く、心と体の専門家

心理カウンセラー

十川千惠美さん(カウンセリングルーム ウェルカム)

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