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  1. ヒット曲、瑛人の「香水」からひも解く〝香りと記憶〟のメカニズム 嗅覚がおよぼす心や体への影響

ヒット曲、瑛人の「香水」からひも解く〝香りと記憶〟のメカニズム 嗅覚がおよぼす心や体への影響

カテゴリ:
メンタル・カウンセリング

元カノの香水の香りが呼び覚ます恋愛の甘酸っぱい思い出。瑛人のヒット曲「香水」で多くの共感を呼んだのは、何気なく嗅いだ香りが過去の記憶と結びついて、その時の気持ちが鮮やかによみがえるという、誰もが経験したことのある現象を、素直に表現した部分でした。恋愛に限らず、ニオイと結びついた過去の記憶は、写真や映像、モノなどよりも強くフラッシュバックする経験をした人も多いのではないでしょうか。

香りから幼児期の記憶がよみがえる「プルースト効果」と呼ばれるものや、アロマの香りによるリラックス効果などもあれば、本能的に遺伝子レベルの近い関係を避けるためと言われる「オヤジ臭」など、ニオイは人の情動を大きく左右することが知られています。心理学や脳科学の分野の研究でも、嗅覚の衰えが記憶の喪失に関係して、認知症につながるという説もあります。

日常生活で、さまざまな香りに影響を受けている私たち。記憶や情動と香りの関係を、アロマセラピーを取り入れたマインドフルネスを実践する心理カウンセラーの荻原順子さんに聞きました。

脳へ直接刻まれる香りの記憶が、心と体の老化を遅らせる。人を印象付けるのは、心の状態が醸し出すその人を包む香りのオーラ

Q: 香りから過去の記憶がよみがえることは誰もが経験したことがあるようです。どのようなメカニズムですか?
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嗅覚は人間の五感の中でも、特に心と体に深く関わるものです。唯一「大脳新皮質」を経由せず、記憶をつかさどる「大脳辺縁系」と直接つながっているため、ある香りが過去の出来事と関連していると、考えるよりも早く、一瞬にして思い出されたりするのです。

精神医学的にも記憶と香りの関わりが証明されていて、フランスの作家マルセイ・プルーストの「失われた時を求めて」という小説の中で、主人公がマドレーヌを口にした時、その香りによって幼少期の記憶がよみがえったことが描かれていることから、「プルースト効果」と呼ばれています。脳科学の分野でも、香りが機能回復に作用することはよく知られていますが、その仕組みはいまだ全てが解明されているわけではありません。

日本のある研究チームが、老人保健施設で行った28カ月にわたるアロマセラピーの実験では、明らかに認知機能に好転が見られたという結果が得られました。記憶力の衰えによる認知機能の低下が、香りによって、投薬でも及ばないほどの効果をもたらしたと言えるでしょう。

Q:自然界ではフェロモンやマーキングといったニオイを利用した行動が、生存と種の保存のための重要な能力であると証明されています。人間界での本能的な嗅覚の役割とは?
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動物は生存や繁殖などのため、マーキングやコミュニケーションにニオイを利用していますが、人間は、腐敗や煙、危険な薬品などの異常な事態を察知するために、嗅覚が必要です。

また、思春期の娘が突然、父親の「オヤジ臭」に敏感になるのは、遺伝子レベルで近親に嫌悪感を抱くためとも言われています。自分の家のニオイには気づかないけれど、他人の家のニオイが気になるなども、テリトリー意識が関係するのかもしれません。

それ以上に大きいのは、心の状態が顕著に表れる〝香りのオーラ〟とも言うべきものでしょう。同じ食生活を送っているはずの家族の中でも、心に鬱屈したものを持っている人からは、体臭とも言えない、その人と関わることをためらわせるような、独特のニオイが漂うものです。逆に、プラス思考に努め、家族関係も問題なく、ストレスをためない生活を送る人からは、心地よい香りのオーラが流れてくるものです。

Q:嗅覚が衰えるとどうなりますか?
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風邪のあとやアレルギー性鼻炎などで嗅覚が衰えると「食べ物がおいしくない」「味がしない」というように、他の感覚も影響を受けやすく、取り入れるべき刺激や情報が少ない状態になってしまいます。

加齢による衰えがわかりやすい視覚や聴覚といった他の感覚器と同様に、嗅覚も衰えていきます。80歳以上の高齢者の4分の3が、嗅覚に障害を抱えているとも言われていますし、アルツハイマーやパーキンソン病などの神経疾患が原因となって、嗅覚に障害が出るという研究も進んでいます。そうなると、周りから得られる情報量が減り、心も体も老化が進んでしまいます。

日頃から自分の好きな香り、リラックスできる香りを知っておいて、それを生活に取り入れることによって嗅覚の老化を遅らせることが、身体的な老化や認知機能低下の防止につながります。

Q:アロマセラピーでは、多くの人がリラックス効果や心理的不調の軽減などを実感しています。香りと心に関するどのような効果を応用したものですか?
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ハーブや花の香りで心身をいやすアロマセラピー効果は、ヨーロッパ、特にフランスなどで、香りが医療効果に及ぼす影響について研究が進んでいて、医療現場でも一般的に取り入れられています。

たとえば、心理的な悩み事や身体的な不調を抱えていて、その悩みを自分の力で解決したいという人に効果的な「マインドフルネス」という瞑想の方法があります。

「今、この時の自分の心に目を向ける」ことで、ストレスを軽減し幸福感を高めるものですが、脳が柔軟でリラックスした状態でなければ、どんなに有効な手だても、心がかたくなに受け入れようとしません。

呼吸法を取り入れた瞑想の前に、エッセンシャルオイルを使ったリラクゼーションセラピーの力を借りて、心をリラックスした状態に導きます。脳や意識を解放できてはじめて、自分自身の体の動かし方のクセや、考え方の偏りを知ることができるようになるのです。

Q:恋愛や人間関係においても、香りが影響することはありますか?
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まだ目の開かない赤ちゃんがニオイで母親を判別することはよく知られています。また、その人への個人的な印象によっても、その香りを快く感じたり、不快に感じたりすることがあります。

恋愛感情を抱いている人の香りには特に敏感にもなりますし、心地良くも感じられるでしょう。その人が目の前にいない時にも、似た香りによって、思い出されるかもしれません。

まれに、好意を持つ人と同化したいというような思いから、その人と同じ系統の香りを身近に置いたり、同じ銘柄の香水を探したりする人がいるようです。もし、現実に親しくなりたい対象なら、そうした行為はおすすめしません。

それよりも、自分がリラックスできる、好きな香りをそっとハンカチの端につけて、生活の中に取り入れてみてはどうでしょう。

ハーブや花の香りは生きているものなので、人それぞれに香り方は違います。自分が気持ちよくいられると、それが香りのオーラとなってあなたを包みます。プラスの言葉を選んだり、物事を前向きに考えたりするよう、そっと導いてくれます。それは周りの人にも、あなたの存在をフワリと印象付けることになります。

荻原順子

マインドフルネス実践家のカウンセリングのスペシャリスト

荻原順子さん(株式会社プラスパ)

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椎名あつ子さん

夫婦・親子・精神疾患など多数経験豊富なカウンセラー

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