「ウィズコロナ」で高まる地方移住への意欲 田舎暮らしのメリットや成功させるコツは
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新型コロナウイルスを機に、働き方が変わり、都市部から地方への移住に関心を持つ人が増えているようです。内閣府の調査によると、東京23区に住む20代のうち、地方移住に関心を持つ人は35.4%でした(内閣府「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」2020年6月21日公表)。
これまで、住む場所を勤務地に合わせて決める人がほとんどだったのではないでしょうか。コロナによりテレワークなどが普及し、自分の生活を第一に、住む場所や働き方を考えるという動きが広がっています。
これからの地方移住で知っておきたい注意点や、成功させるために準備できることは何でしょうか。一級建築士・不動産鑑定士の中山聡さんに聞きました。
住居費や生活費、コロナ感染への不安は格段に減るが、最大の壁は「ご近所付き合い」。まずは週末だけ地方で暮らす「2地域居住」で実情を知ろう
Q:コロナを機に、地方移住への関心が高まっているようです。特に、20代の若者にも広がっている理由は何だと考えられますか?
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コロナ以前にも、東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)在住者の49.8%が「地方暮らし」に関心を持っているという調査結果が出ています(内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局「移住等の増加に向けた広報戦略の立案・実施のための調査事業 報告書」、調査は2020年1月~3月実施)。
もともと、通勤や会社へのストレスなどから、地方移住に興味を持つ人は少なくない印象ですが、コロナを機に、ある移住相談の窓口で相談件数が増えたとの例もあります。
コロナによる自粛生活を経て、「三密を避けたい」「通勤電車に乗りたくない」「エレベーターが怖い」という人は多いです。古民家での日々の暮らしを配信する人気の「You Tube」チャンネルなどもあり、毎日満員電車に揺られ、忙しい自分の生活と比べて、「ゆったり丁寧な暮らし」に憧れる人が増えたのではないでしょうか。
また、テレワークの普及など働き方の変化がきっかけとなり、「どこに住んでも、仕事はできる」と感じたことも大きいと思われます。地方までいかなくとも、関東周辺では、都心のマンションよりも、郊外の一戸建て住宅の人気が高まっているようです。
Q:自然に囲まれてゆったりと暮らすことに魅力を感じる人が多い地方移住。実際に移住する上でのメリットを教えてください。
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大きく3つのメリットがあります。
①生活費を安く抑えることができる
トマトやナスなど野菜を収穫できる畑を持ち、自給自足に近い生活ができれば、年収50万円程度で一人暮らしの生活は成り立つといえます。
②家賃の負担が少ない
全国どこの地方でも、ほとんどの場合、県庁所在地から車で1時間程度の立地で、築年数が古い家なら家賃が月額5000円~1万円程度で見つかります。空き家問題を抱えている地域は多く、市町村の空き家バンクなどを通じて、選べる物件も充実しています。
③新型コロナ感染への不安が減る
通勤電車やエレベーターなど、「三密」になる場所はほとんどありません。都市部の人が抱えている感染への不安は格段に減ると思われます。
Q:移住を考える上で、知っておくべき注意点はありますか?
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これまで、田舎で暮らした経験があるかどうかは大きな差となります。田舎暮らしでは当たり前のことが、都会しか知らない人にとってはギャップとなります。例えば、虫が多いことや積雪などは、二の足を踏む要因の一つです。また、移動手段は車となります。維持費を気にする人が多いですが、都市部での電車賃と比べると、軽自動車なら負担はそれほど変わりません。
多くの移住経験者がつまずくのが、「自治会」の問題です。田舎であればあるほど、いわゆる「自治会費」として、年数万円を徴収する自治会が多くあります。大規模なお祭りがある場合は、年数十万円の自治会費、あるいは十万円単位の入村費が必要な地域もあります。あわせて、草刈りや地蔵祭りなど、自治会の行事に参加することが前提です。事前にネットなどで詳細を調べることは難しく、住んでみて初めて知る、地域で続く伝統にとまどう人は多いです。
また子育て環境として、子どもの保育所や学校が近くにあるとは限らず、塾はないに等しいと思った方がいいでしょう。テレワークなどで、引き続き仕事が続けられる場合はいいですが、移住先に都市部より仕事がある可能性は低く、転職は困難といえます。
Q:自治体では、移住促進のためにさまざまな取り組みを行っています。具体的にはどのような取り組みがありますか?
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各都道府県や市町村では、移住相談や物件のあっせんなどを行う窓口を設けています。コロナ以前から電話やLINEなどで相談を受け付けているほか、オンライン会議ツールなどを導入している自治体もあります。また、都道府県では、東京や大阪に拠点がある場合も多いです。
移住支援としては、移住者に100万円の支援金を支給する自治体や、引っ越し費用やリフォーム費用の一部助成を行う自治体があります。ファミリーなら、子どもの医療費が無料など、子育て支援が充実している場合もあるので、あわせて確認しておくといいですね。
Q:「ウィズコロナ」時代に、地方移住は増えるのでしょうか。地方移住を成功させるコツは?
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地方移住をする人が増えるとともに、移住に失敗する人も増えることが予想されます。例えば、高知県は自然豊かなイメージで、移住希望地として注目されていますが、移住者の約1~2割が、最終的に都会へ戻っているといいます。
ミスマッチを防ぐために、高知県では、まずお試し移住をしながら、最終的な移住を決める「二段階移住」をすすめています。ただ、実際に移住するかどうかを判断するまでには、台風や寒さなど、一年を通して住んでみないとわからないこともあります。最大の問題となる、ご近所付き合いも実情がつかみにくいでしょう。
一方、「2地域居住」は、平日は都市部でこれまで通りの生活を送り、週末のみ地方で暮らす方法です。別荘感覚で田舎暮らしを楽しめるという点でおすすめですが、2カ所の家の維持費や、都市部と地方の往復など、資金や時間、体力に余裕がないと実現は難しいかもしれません。
地方移住の目的が、コロナ感染への不安解消であるなら、まずは都市部の郊外エリアの住宅地で庭付き一戸建て住宅を探す方が有効です。都市にもすぐに出られますし、さらに大型ショッピングセンターがあれば、これまでと変わらない便利な生活を維持しながら、感染への不安や住居費の負担を軽減できます。
それでも、「やっぱり田舎暮らしがいい」という人は、すぐに今の住居を処分せず、まずは「2地域居住」で移住後の暮らしを実体験してください。移住先での人間関係にストレスを感じないかどうかが、成功の分かれ目です。憧れの田舎暮らしは、「そう甘くはない」と覚悟しておくこと、これらのことを乗り越えた先にあることもポイントです。
プロもうなずく不動産のプロ
中山聡さん(わくわく法人 rea 東海北陸不動産鑑定・建築スタジオ株式会社)
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