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トヨタやカルビーが在宅勤務制度を拡充 手当など必要な仕組み、メリットは?

カテゴリ:
ビジネス
キーワード:
働き方改革

新型コロナウイルス感染拡大により普及した在宅勤務を、定着させる動きが広がっています。製菓大手のカルビーでは、7月1日から、オフィス勤務約800人を対象に、モバイルワークを基本とした勤務制度を導入。報道によると、トヨタ自動車も、9月以降、事務職や技術職の若手など、在宅勤務の対象を広げ、制度を拡充する方針を示しました。

従来の雇用制度では、出社することが前提で、働いた時間をベースに、給与などが決まっています。そのため、会社でない場所で働く社員の評価方法や、残業時間の扱いなどが課題となっていました。在宅勤務を制度化するには、職務内容をベースに雇用する「ジョブ型」への移行や、在宅勤務手当など、新たな仕組みが必要です。

在宅勤務を成功させる仕組みづくりとは。働き方はどのように変わるのでしょうか。社会保険労務士の増尾倫能さんに聞きました。

労働時間の管理と機器やコミュニケーションツールなど、働く環境を整えることがポイント。職務に対して給与を支払うジョブ型は、解雇のハードルが高い日本ではなじみにくい可能性が

Q:コロナを機に、在宅勤務を定着させる企業は増えていますか?
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トヨタ自動車、カルビー、日立製作所などの大手企業で増えているほか、中小企業では主に外資系がコロナ以降も在宅勤務を認める傾向にあります。これまで、在宅勤務導入の一番のネックとなっていたのは、作業効率が下がると考えられていた点でした。今回、コロナにより必要に迫られたことで、思いきって導入した企業がほとんどでしょう。

基本的に、在宅勤務が可能になるのは、コンピューターで業務ができる業種や職種です。大手で在宅勤務の導入が進む背景には、「時流に合わせた働き方を柔軟に取り入れている」など、企業のイメージ戦略としてプラスになるという理由もあるでしょう。また、在宅勤務を制度化するには、機器やセキュリティー対策など、社員それぞれの自宅の環境を整えることも必要です。コストがかかるため、資金力のある大手の方が取り入れやすいといえます。

Q:在宅勤務を導入する場合、これまでの仕組みでは問題となる点はありますか?
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在宅勤務の導入には、大きく2つの問題があります。一つは、出社しない社員の労働時間の管理です。雇用側は、社員の仕事に取り組む様子が見えないことを不安に感じます。実際に、在宅勤務を導入しようとする経営者から、「パソコンのカメラで、常に社員の働きぶりを見ておきたい」という相談がありました。

ただ、出社時にも、始業から終業まで、部下の働きぶりを常に監視する上司はいるでしょうか。行き過ぎた対応は逆に生産性を下げることにつながります。

一方で、時間の制約がなくなるため、長時間労働につながる可能性もあります。折に触れて上司から注意喚起するなどの工夫はもちろん、適切な勤怠管理のしくみづくりが求められます。

また、対面でのコミュニケーションがとれないことは、業務を進める上で大きな問題となります。社員が感じているちょっとした不満や疑問などが届きにくくなるため、上司は部下にいつも以上に配慮しなければいけません。Zoomのようなオンライン会議ツールのほか、LINEや電話など、あらゆるツールを活用し、気軽にコミュニケーションがとれる環境を整備する必要があります。

Q:在宅勤務の導入に際して、「ジョブ型」に雇用制度を変える企業も多いようです。「ジョブ型雇用」では、どのような働き方になるのでしょうか?
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ジョブ型の雇用制度では、社員の職務(ジョブ)をベースに「業務への対価を支払う」契約となり、職務定義書(ジョブディスクリプション)で、明確に仕事内容が定義付けされます。評価は、職務に対する達成度となり、企業にとっては成果を評価しやすいという利点があります。働く側は、専門性を高めることができ、スキルアップにつながります。

ただ、同じ企業内でも、技術や環境が変われば業務内容が変わる可能性があり、契約時の職務がいつまでもあるとは限りません。従来型の雇用制度では、新たな業務を任せることができますが、ジョブ型ではそれも難しくなります。もともとジョブ型雇用が浸透している欧米では、解雇という方法をとることが一般的ですが、解雇のハードルが高い日本では、なじみにくいのではないでしょうか。

限られた人員でさまざまな仕事をこなす中小企業では、マルチタスク化が避けられないため、ジョブ型が広がる可能性は少ないと考えられます。大手企業では多くの人員を抱えているため、高い技能を持つスペシャリストを求める部門では、ジョブ型を取り入れやすいかもしれません。

Q:評価制度と合わせて、見直される規則や待遇はありますか?
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リモートワークを含めて、在宅勤務規定を新たに作成する必要があります。主に、労働時間の管理、パソコンなど機器の取り扱い、情報漏えいなどのセキュリティー対策に関する規定を定めます。

待遇面では、通勤手当が見直しの対象になります。通勤用の定期券支給は廃止され、出社した日数分の交通費を実費で支給する、などに変更されるでしょう。また、在宅勤務手当の支給を行う企業も少なくありません。「光熱費や通信費として月額1万円を支給」「ノートパソコンやモニターなどを現物支給」「上限3万円でデスクや通信機器などの購入に使える」などの実例があります。

在宅勤務は作業効率が落ちるとイメージされがちですが、その理由は「社員のさぼり」だけではなく、仕事環境が整っていないことにもあります。在宅勤務を成功させるには、それぞれの自宅の環境を整えることもポイントとなります。

Q:今後、在宅勤務を前提とした採用も広がるのでしょうか。働く側にとってのメリット、デメリットを教えてください。
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前述のとおり、在宅勤務にできない業種や職種があり、日本ではジョブ型の雇用制度がそれほど浸透しないことが予測され、在宅勤務を前提とした採用自体は、限定的な動きにとどまるように思います。

最大のメリットは、通勤のハードルがなくなることです。企業側は、居住地に関係なく優秀な人材を確保することが可能になります。働く側にとっても、どこに住んでいてもやりたい仕事を選ぶことができ、通勤時間がなくなることは利点となります。デメリットは、成果のみで評価され、職務がなくなれば、雇用がなくなる可能性がある点です。

アフターコロナでは、在宅勤務を「良いこと」ととらえる流れがあり、身近な働き方として今後も定着するでしょう。在宅勤務が前提の採用ではなく、現在雇用している社員を在宅勤務に移行したり、部分的に在宅勤務を取り入れたりする動きが主流になるのではないでしょうか。

在宅勤務を導入すると、印刷物や決済のルールなど、これまで当たり前と思われていた業務の問題点が見えてきます。

実際に、当社が在宅勤務を導入していた際、オンライン会議で上司も部下も関係なく、均等に分けられた画面上で並ぶと力関係がフラットになり、議論が活発化するなど新たな気付きがありました。本格的な制度化に至らないとしても、どの企業でも一度は在宅勤務を取り入れ、一人一人が働き方を見直すチャンスにつなげてほしいですね。

人事労務の悩みに対応し中小企業を支援するプロ

増尾倫能さん(社会保険労務士法人 協心)

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