長引く休校による学習の遅れ、子どもを「コロナ世代」にしないために教育格差や学力差にどう対応すべきか
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全国の公立小・中・高校を中心に、長いところでは3月から5月まで、新型コロナウイルスの影響による臨時休校が続きます。新学期に登校日を設け、教科書を配り、課題を与えている学校が多いようですが、「習っていないからわからない」「家で勉強する気になれない」など、家庭学習がスムーズに進まない子どもも少なくありません。
一方、自治体によって、公立校でもオンライン授業やタブレット端末を活用した学習サポートが受けられたり、家庭により、塾や通信教育などを活用できたりと、家庭学習を補う方法がとれる子どももいます。
地域や経済的な要因などによる教育格差を心配する保護者も多く、将来「コロナ世代」などと、教育が不十分になった世代として扱われるのではないかという声も挙がるほどです。教育格差が広がらないように、今、子どもの学びを止めない方法はあるのでしょうか。塾講師の加藤哲也さんに聞きました。
オンライン学習ツールを活用し「学びを止めない」工夫を。YouTubeなど身近なもので勉強のハードルを下げて
Q:休校中の学習について、学校や家庭によって、どのような格差が出ているのでしょうか?
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全国の小・中・高校の中には、新学年の授業がまったく進んでいないところがあります。特に受験を控えた中学3年生や高校3年生にとっては、入試の日程がずれる可能性は低く、入試の出題範囲に授業が追いつかないという深刻な事態も考えられます。
休校中の対応は、「課題のプリントを配布するだけ」「毎日オンライン授業を行う」など、地域や学校によってバラバラです。また、ひとくちに「オンライン授業」と言っても、授業の質には差があります。慣れない教員が急きょ作った授業映像を配信する学校もあれば、民間のオンライン学習サービスを活用する学校もあります。公教育の担う「学びの機会均等」が崩壊し、格差は確実に生まれています。
さらに、通学によって保たれていた、子どもたちの生活リズムも崩れています。毎日が昼夜逆転、家に誰もいない昼間は好き放題というケースもあれば、在宅ワークになった両親が勉強をサポートするなど、家庭による意識の差が出ています。
Q:文部科学省によると、公立校の休校中の指導について、独自に作成した授業動画を活用している学校が10%、双方向のオンライン指導を行っている学校は5%でした(※)。ごく一部の学校で行われている「オンライン授業」とは、どのようなものですか。
※「新型コロナウイルス感染症対策のための学校の臨時休業に関連した公立学校における学習指導等の取組状況について」(4月16日発表)
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公立でも私立でも、すでにICT化を進め、慣れている学校と、今回急きょ取り組んでいる学校では、オンライン授業の内容に大きな差があります。
例えば、岐阜県では県立高校全63校と特別支援学校全21校で、4月20日から順次、オンライン授業を始めることになりました。決められた時間に、教員による講義の映像が配信され、生徒が自分のスマホやタブレット端末で視聴します。ただ、教員の力量によって、授業の質に差が出ており、現時点では、一部の学校で活用されている「スタディサプリ」などの民間の映像授業への満足度の方が高いようです。
私立校の先進的な例では、生徒に1人1台iPadが配布され、オンライン授業の配信だけでなく、学習管理システムにより、教員と生徒が密に連絡できるなど双方向の指導が可能となっています。
Q:環境によって学力差を広げないために、誰でも家庭でできる効果的な学習法は何でしょうか?
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さまざまなオンラインツールを使って、家庭で「学びを止めない」工夫をすることが大切です。休校を機に、民間企業がさまざまなツールを無料公開しており、お金をかけずに子どもが学べるツールがいくつもあります。そのようなツールを活用して、新学年の新しい単元をどんどん先行して予習してください。
例えば、「角川ドワンゴ学園N高等学校」では、N高で導入している学習アプリ「N予備校」を無償で提供し、オンライン授業を無料公開しています。また、小中学生におすすめなのが、教育系YouTuber(ユーチューバー)「葉一(はいち)さん」など、教育系動画です。日ごろからあまり勉強しない子に、いきなりいろいろな学習ツールを与えても効果は限定的です。しかし、YouTube(ユーチューブ)では子どものハードルが下がります。「毎日やることがない」と時間を持て余している子どもの興味を引くようなツールを提案することも大切です。
Q:学校再開後、学習の遅れを取り戻すために、今後どのような措置が予想されますか?
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新型コロナウイルスの影響がいつまで続くのか現時点では不透明ですが、臨時休校はさらに長引くことが予想されます。すでに岐阜県岐阜市など、5月31日までの休校延長を発表している自治体もあります。
4月、5月が休校となった場合、新学年の丸2カ月、授業が止まることになります。個人的には、夏休みを返上して補習を実施する可能性が高いと予測していますが、それでも2カ月分の授業を取り戻すには足りないくらいです。
また、学校が再開されると、授業が駆け足で進んでいくでしょう。平時なら、夏休みに定着の甘かった単元の復習ができました。例年の受験生なら、センター試験対策や面接の練習などの準備期間に充てられましたが、本年はそのための時間までもなくなる可能性があります。
特に、大学受験を控えた高校3年生は、学校再開後の授業進度にあわせて勉強していては大学入試に間に合いません。もともと今年は大学入試改革の初年度にあたり、改革の混乱により、受験対策も混迷を極めていました。その上、休校により高校が2カ月も止まっていれば、入試の出題範囲の2割~3割を取りこぼすことになります。
また、通常、8月と9月が推薦入試やAO入試の時期ですが、今年は、出願要件となる部活動や国体、開催が予定されていたオリンピック出場などの実績を積み上げることができません。英検などの資格試験や、全国一斉に行われる模擬試験なども中止されており、現時点では学習成果を測ることもできません。
一部の大学や有識者からは、「9月入学」への改革を提案する声も出ていますが、実際に取り組む大学はごくごく限定的でしょう。
Q:親の立場では、休校中に学力の差がどんどん広がるのではないかと不安が募ります。子どもが自ら学習に取り組んでくれるよう、危機感を持たせた方がいいのでしょうか?
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子ども自身にも学びが止まっていることに危機感を持ってほしいとは思いますが、特に小学生など小さい子どもには、親が危機感をあおることで、余計に不安になる可能性がありますので、注意が必要です。
親御さんは、子どもが自ら考え、行動に移せるよう「促す」ことを意識してください。子ども自身が、「何をすればいいのか」を考え、自分のやるべきことを見つけられるよう、多様な選択肢を用意することが重要です。
例えば、子どもと一緒に、オンラインツールの情報を集め、この機会に気になるツールを使って、親子で勉強してみてください。自分で勉強を進められる力がつけば、たとえ休校が秋まで長引いたとしても、マイナスの影響を最小限に抑えることができます。
また、閉塞感のある中で勉強していると、子どもたちは孤独や寂しさを訴えます。Zoom(ズーム)やLINE(ライン)などのビデオ通話を活用し、朝の30分など、毎日決められた時間に画面を通じて同級生と顔をあわせて、静かに自習をする時間をとってみてください。
同じ年代の友だちが勉強する姿を見ることは励みになり、「自分で学びを進めよう」という意識が芽生えます。学校は教育を受けるだけでなく、人とつながる場でもあります。休校中だからこそ、人とつながる機会を大切にしてほしいですね。
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