「子どもYouTuber(ユーチューバー)」などによる動画投稿が増加、親子で押さえておくべきITリテラシーとは
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ネットが普及し、子どもから大人まで、タブレットPCのほか、専用のゲーム機や端末を所有するようになりました。現在は、家族が共に在宅する機会も多くなり、別々にゲームや映像、買い物などを楽しむ時間が増えています。
外出自粛の中で、さまざまなコンテンツを閲覧する人が増えているなか、動画投稿サイトで閲覧数が伸びています。そして有名人のみならず一般の人や子どもが登場するオリジナル動画も多く、話題になっています。
人気者になれば莫大な収入も得られることから、子どもたちの人気の職業ともなっている「YouTuber(ユーチューバー)」。中には出演するだけでなく、動画作成までも手掛ける「子どもユーチューバー」も登場しているようです。
小中学生や若い世代を中心に、簡単に閲覧・投稿できることで陥る危険、また、正しく楽しむために知っておくべきことは?Webコンサルタントの平尾貴志さんに聞きました。
誰に向けてどのような目的で投稿するのか、親子で話し合うことが大切。子どものリテラシー向上とリスク回避には幅広い知識や学習が必要に
Q:YouTube(ユーチューブ)などで子どもが登場または編集・撮影を行った動画が、数多く投稿されています。「個人情報が流出するのでは?」など、慎重な意見もありますが。
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今や動画サイトへの投稿は、そこに大きな収入がついてくることを目的に、一部の特別の人がするものという認識ではなくなっています。ほとんどの人が、自分だけのパソコンやスマートフォンなどを持つ時代になり、Facebook(フェイスブック)やブログで日常の出来事を投稿するように、動画を投稿することがスタンダードになりました。
しかも、子どもが登場または作成した動画でも、大抵の場合、保護者が環境を整え、主導して行っていることが多く、これによるリスクがあるとすれば、むしろ大人のリテラシーが低い場合に限ると言ってもいいかと思います。
例えば、子どもの了解を得ずに本人の写真や動画を投稿すると、子どもが成長した数年後に、第三者によってさかのぼられて「不快な思いをしてしまう」ということもあるかもしれません。
後々、トラブルなどに発展しないように保護者が配慮することが大切で、親子でよく相談して、子どもの意見をくみ取ったうえで、楽しんで動画投稿を行うことはとても有益だと思います。
Q:過去には、未成年が投稿した動画が問題になった事例もありましたが、そうしたリスクが低年齢層にまで広がるということはありませんか?
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確かに、以前、コンビニのアルバイト店員が自分の不適切な行為をSNSなどに投稿して、問題になりました。
一部の保護者世代が危惧するのは、保護者の監視下以外で、こうした社会的に非難されるような事態になること、あるいは、隠れて視聴していた不適切動画サイトやゲームの課金で、高額な請求を被ることなどでしょう。
だからと言って、「スマートフォンの使用や視聴を制限する」ということではなく、やはり、各家庭でのルールづくりと、正しい情報を収集する能力を高めることで、危険に遭遇しないようにすることが大切ではないでしょうか。
普通に家族旅行の画像や動画をリアルタイムで投稿しただけでも、留守を確信して空き巣に入られたりしたというようなケースもあります。
投稿の際は、「誰が見ているかわからない」という意識を持つことが必要です。
新たなリスクは常に発生し続けるので、学校で教えることだけでは管理しきれない問題が常に起こると考えなければなりません。各家庭で「どこまでならOK」ということを日頃から親子で話し合って決めておくことが大切です。
Q:小中学生の教育現場で、ITリテラシーはどの程度進んでいますか?
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今年から、小学生のプログラミング教育が必修になっています。
教育現場では、これまでの教科学習の内容を、順序立てて論理的に考える「プログラミング的な思考をもって解き明かす」という教育が進められています。
同時に、「理屈なく美しい、心地良い」という感性を育てる教育も大切とされ、子どもが、これから急速に進んでいくIT社会で、健全に生きていくための指針が示されています。
実際に私が関わった小学生の修学旅行の勉強会では、子どもたちは、スマートフォンやタブレットで動画や画像を撮影することを前提に、「旅行先の情報をネットで調べ、どこでどのような取材をしたいのか」といった行動計画を立てます。
旅行後、パワーポイントなどで編集したレポートを保護者への報告会で流します。
ここでは「誰に、どんな目的で」ということがはっきりしているので、情報発信の内容や方法についても自ずと明確になってきます。これが、情報発信の基本となるポイントで、ITリテラシーの理解と浸透を促すものになっています。
ITに関しては、子どもたちこそがネイティブジェネレーションです。保護者世代が苦労して手に入れる知識とは別次元の「未来世界を生きる」と言ってもいいかもしれません。
Q:ITスキルを高めていく際に、動画撮影や編集の技術向上、情報収集能力と同時に大切なこととは?
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昔と比べて、IT業界の技術革新は劇的に進み、現在必要とされる技術も数年後には必要なくなっているかもしれません。キーボードに慣れた大人がスマートフォンのフリック入力になじまないと思っていたら、次は音声入力の時代へ、というように。
一方で、例えば前述の音声入力では、英語の場合はネイティブに近い発音でなければ、AIが音を拾えないという事態になりますし、日本語にしても、正しい日本語の発音を知っておかなければなりません。つまりこれからも、多分野の知識や学習が必要ということです。
また、オンラインで知りたい情報は何でも得られるものと、多くの人は思っています。しかし、逆に言えば、知りたい情報しか得られていないのです。
ユーチューブなどは、これまでもユーザーのデータを収集し、個人の嗜好に合わせた「パーソナライズ広告」を流してきました。私たちは、知らず知らずのうちにコントロールされ、偏った情報を与え続けられているのです。
世の中には、自分が知らないこと、興味がなかったことでも、有益で大切な情報がたくさんあります。ネットだけでなく新聞やテレビなども、現実世界で起きることをはじめ多くの情報に触れる機会として、これからも必要になってくるでしょう。
子どもたちがITスキルを高めていくときには、情報が多岐にわたり、その中で取捨選択していくことの重要性をきちんと理解させることが、保護者の役割になってきますし、本当の意味でのリスク回避と言えるでしょう。
Q:動画制作の技術は、個人的な趣味として動画サイトで閲覧数を増やすなどのほかに、今後の働き方や仕事につながりそうですか?
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外出自粛でテレワークを取り入れる企業も増えており、今後も在宅でできる業務は増えるでしょう。就職・転職活動中の人が、資格の一つとして撮影・動画編集の講習会に参加することもあるようです。
実際、私どものスクールにも、早期リタイアの人など、デジタルスキルの初心者に加え、すでに仕事として活躍中のプロからも、新しい知識やツールの情報を学びたいという問い合わせが増えています。
全ての人が手にできるツールだからこそ、子どもに限らずどんな年代にも、初めて遭遇する新しい技術や考え方は、生涯にわたり学ぶべきことの多い分野のひとつでもあるでしょう。
職業にしても、ユーチューバーのみならず、これまでになかった「eスポーツ」のプロ選手など、次々と新しいものが登場しています。
新型コロナウイルス収束後の世界は、これまでと違う価値観のもとで動いていくでしょう。新しいものには新しいリスクがあり、だからこそレベルに合わせたリテラシーの向上が必要です。
デジタルスキルを学ぶ場を提供する人材育成のプロ
平尾貴志さん(有限会社クレイド)
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