東京や大阪で広がる「在宅勤務」 新型コロナウイルスきっかけのテレワーク、メリットとデメリット、今後の行方は?
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京都の小池百合子知事は、連日の記者会見で週末や平日夜間の外出の自粛要請と合わせて、「できるだけ在宅勤務を」と呼びかけています。
2月以降、在宅で仕事を進めるテレワークを突発的に導入する企業が増えています。東京都の会見を受け、日立製作所など、さらに強化を進める大手企業も出ており、今後も拡大する傾向にあります。
ただ、今回、急きょテレワークに取り組む人も多く、一部で「やっぱりオフィスで仕事をする方がはかどる」という声もあるようです。テレワークのメリット、デメリットは?収束後にも定着するのでしょうか。社会保険労務士の三谷文夫さんに聞きました。
ワークライフバランスがとりやすく、通勤の負担も軽減。デメリットとされるコミュニケーション不足はWeb会議システムなどの解決策も。危機的状況での事業継続に有効のため、今後も広がる可能性が高い
Q:新型コロナウイルスの影響でテレワークを導入した企業は増えていますか?
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これまでテレワークを提案しても、必要ないと興味を示していなかった中小企業からも、新型コロナウイルス感染拡大防止を受けて、「テレワークを導入したい」「規則はどうすればいいのか」などの相談や問い合わせがあります。大手企業とは異なり、中小企業では、まだ整備が追いついていない印象ですが、今回のコロナウイルスをきっかけに、テレワーク(在宅勤務)を前向きに検討しようという意識の高まりを感じます。
ただ、3月上旬にとられたアンケートでは、正社員約2万人のうち、テレワークを実施しているのは13.2%と、非常時にもかかわらず、まだ低い割合にとどまっている印象です(パーソル総合研究所「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」、2020年3月9日~15日)。
Q:これまで、働き方改革でテレワークが推奨されていたにもかかわらず、あまり広がる兆しがありませんでした。その理由は何ですか?
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テレワークが向いている業種と、向いていない業種があります。医療や介護・保育といった福祉、サービス業など対面で進める仕事や、工場での製造など現場重視の仕事では、テレワーク化しにくいでしょう。一方、一人で完結する仕事や、パソコンが1台あればできる、デザインや広告、IT関連の業務は導入しやすいでしょう。
企業側がテレワークを懸念する理由は大きく2つあります。
まず、労務管理や時間管理の難しさ。特に管理職は、「部下が仕事をさぼっていないか」など、労働時間が把握しにくいことへの不安を感じるようです。
次に、テレワーク用のICT環境整備にかかるコストです。サイバー攻撃や情報漏洩などのリスク回避策として、セキュリティを強化したノートパソコンを一人一台貸与したいが、コスト面を考えると踏み出せないという声がよく聞かれます。また、勤怠管理やコミュニケーションを図るツールの導入費用も検討しなくてはなりません。
一方、働く人から「テレワークをやりたくない」という声もあります。長年、社員同士がオフィスに集まって働く職場風土に慣れている人は、会社を離れ自宅で仕事をすることに、大きな壁を感じるようです。
Q:テレワークが導入されると、働く人にとってのメリット、デメリットは?
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最大のメリットは、仕事とプライベートの両立がしやすく、ワークライフバランスがとりやすいことです。また、通勤がなくなるので、通勤にあてていた時間を有効に使え、健康面での負担も少なくなります。
デメリットは、上司や部下、同僚とのコミュニケーションがとりにくいことです。特に上司が「部下が何をしているかわからず、やりにくい」と感じる人が多いようです。自宅で仕事場の確保ができなかったり、子どもがいたりする場合は、「仕事に集中できない」ストレスも生まれます。
さらに、デメリットとは言い切れないですが、評価の面で、プロセスではなく、結果を重視する成果主義になりやすいと言えます。部下のプロセスを把握できず、「どのように評価すればいいのかわからない」と戸惑う上司も少なくありません。働く側、企業側にとっての課題の一つと言えるでしょう。
Q:実際に、今回初めてテレワークで働いた人から、「集中できる」など評価の声がある一方で、「やはりオフィスで働く方がいい」という声もあるようです。テレワークでうまく仕事を進めるコツはありますか?
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実際に、働く人がお互いに直接顔を合わせる機会を作っている企業は、うまく進めることができているようです。一緒に仕事をするだけではなく、朝礼やランチといった業務と関係がない場面であっても、進捗や近況など、ちょっとした悩みを共有できる場があると、本来の業務もスムーズに進みます。
あわせて、Web会議システムなどで、必要に応じて、いつでも誰かに相談できる環境を用意しておくことも大切です。Skype(スカイプ)やZoom(ズーム)など、無料で簡単に使えるコミュニケーションツールを活用し、いつでも働く人同士がつながる工夫があると安心感があります。
個人で意識したいのは、オン・オフの切り替えです。通勤がないことで切り替えにくく、つい長時間労働になったり、休憩もとらずに1日中パソコンに向かったりという状況に陥る人もいます。
会社としても労働時間の管理を行う必要はあるのですが、個人としても適度に休憩をとり、自分でタイムスケジュールをたてることが、効率的に業務を進めるコツです。
Q.今回を機に、収束後もテレワークは定着すると考えられますか?
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今回「とりあえず」でも、在宅勤務などのテレワークを導入した企業では、「取り組んでよかった」「うちの会社には合わない」など効果を検証し、推進するかどうかをこれから判断することになるでしょう。ただ、大きな流れとしては、広がっていくと考えています。
新型コロナウイルスに限らず、災害など危機的な状況の際に、柔軟な対応ができるテレワークは、「事業継続計画(BCP)」の対策としても、企業の強みとなります。
また、4月1日から大企業に適用される「同一労働同一賃金」は、正社員とその他の雇用形態の従業員との間にある不合理な待遇差を解消することが主な目的となっています。企業は、同じ業務に対して同じ賃金を払えるよう、評価制度を整備していくことが求められます。
企業側が考える「テレワーク導入の課題の一つ」として、評価をどのように行うかという面があります。同一労働同一賃金が、テレワークに対する評価基準をきちんと定めるきっかけになれば、さらに広がっていくのではないでしょうか。
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