英語民間試験が延期 来年度からの「大学入学共通テスト」対策は?
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11月1日、来年度から始まる大学入学共通テストへの、英語民間検定試験の導入を見送るという文部科学省の決定が、受験生と保護者、教育現場に大きなショックを与えました。
現在の高校2年生が受験生となる、2020年度から実施される「大学入試改革」。これまでの大学入試センター試験(以下センター試験)が廃止され、「大学入学共通テスト」に代わります。大きな目玉として、英語民間検定試験が「読む・聞く・話す・書く」の4技能をはかるために活用される予定でした。延期による混乱の中でも、受験生は人生の大きな節目である大学進学に向け、準備を進めるしかありません。これからの大学入学共通テストへの受験対策は? 大学受験に詳しい、塾講師の加藤哲也さんに聞きました。
問題視されている採点や受験機会はAIで解決に。2024年には「思考力」がさらに重視される
Q:「大学入試改革」の一環として、2020年度から「大学入学共通テスト」が始まります。これまでのセンター試験との違いは?
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センター試験は、1990年から約30年続いています。マーク式では、「知識を落とし込むだけ」「テクニックで点数がとれる」などの弊害が指摘され、「思考力・読解力・表現力」を重視して評価しようという方向が示されました。
大きな違いとして、センター試験の問題では平均得点率が6割でしたが、共通テストでは5割となり、すべての科目で難易度が上がります。新たな内容が導入されるのが、英語・数学・国語の3科目。英語の配点では、センター試験の筆記200点・リスニング50点から、リーディングとリスニングが各100点になり、英語民間検定試験が併用される予定でした。数学と国語では、記述式の問題が3問ずつ加わります。
Q:今回延期された英語民間検定試験の導入。その仕組みと延期の原因は?
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民間6団体・7種類の試験が認定され、高校3年生の4月~12月に最大2回受験。共通IDにより、大学に成績を提出し、出願資格や入試の加点として利用できるという制度でした。共通IDの手続き開始は、延期が決まった11月1日から。このスケジュールは、現在の高校3年生や浪人生の再受験のことが考慮されていません。この段階で、試験日程や会場の発表を行っていない団体もあり、〝今回は実験〟という印象を受けました。
試験ごとの難易度もバラバラで、中には高校の学習課程から逸脱したものや、試験内容が未公開のものもありました。また、英語民間検定試験の1つである、「IELTS」では、試験会場が全国に16カ所のみで、受験料は2万円以上かかります。受験生間で、居住地や経済的な理由で、有利・不利が生まれることは明らかでした。受験生目線で考えられていない制度だったことが、延期を招いたといえます。
Q:英語民間検定試験の導入が延期されたことで、どのような影響がありますか?
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2つの影響が考えられます。まず、多くの国公立大学は、5月から、英語民間検定試験を大学ごとの合否判定にどう利用するかを、公式に発表していました。発表にあわせて高校2年生は、当然準備を進めていきます。今回の見送りにより、各大学から試験方式や配点を見直す発表が出てくるでしょう。
また、共通テストの英語問題も変更される可能性が高いです。民間検定試験の導入の狙いは、英語4技能のうち、マーク式テストでは測定が難しい「話す・書く」力をはかるためでした。当初のリーディング・リスニングのみから、センター試験のライティングの要素(英作文の代替である単語の整序)とスピーキングの要素(発音・アクセント)が、再び導入されるかもしれません。
Q:英語と並んで注目されている、数学と国語の記述式は?
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2017年、2018年のプレテストを見る限り、数学は、出題傾向が大きく変わり、旧来のセンター試験対策は通用しなくなると考えます。ただ、記述解答をすること自体は、計算過程や解答をわずかに記述するだけなので、特別な対策は必要ないでしょう。
一方、国語は、大問が1つ追加されます。さらに気になるのは採点方法です。約50万人が受ける共通テストで、個々の表現に対して、どの採点者も同じさじ加減で、正確かつ公平に評価することは、難しいでしょう。また、評価は、1点きざみではなく、A~Eの5段階で示されます。部分的な加点や減点が評価にどう響くか分からないのに、入試の合否には大きく影響。自己採点では精度の高い結果が得られず、志望校の決定が難しくなる点が懸念されます。
Q:英語民間検定試験は、2024年度に再度導入が検討されます。「大学入学共通テスト」の第2弾リニューアルが予定されていた年ですが、どうなると考えられますか?
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2024年度には、「思考力」がさらに重視され、記述式問題が、国語ではボリュームを増やし、地理歴史・公民、理科分野でも、新たに導入される予定です。個人的には、「思考力を問う」という方向性自体はポジティブに受け止めています。特に、地理歴史・公民分野では、資料読解力や分析力を問う「良問」が生まれるのではないでしょうか。
一方で、今問題視されている、採点や受験機会の「公平性」については、5年後には技術的な進歩によって解消されるだろうと期待しています。具体的には、AIによる自動採点、CBT(コンピュータを用いた試験方式)の活用など。例えば「英検CBT」では、今春からライティング・スピーキングのテストにAI採点が導入されていますし、これまでと異なる実施方法も検討・実践されるかもしれませんね。
Q:延期の決定が遅く、受験生に不利益との意見も。受験生や保護者は不安が募るばかりですが、これから気をつけることは?
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現在の高校2年生は、特定のテストだけを意識した偏った学習に特化してしまうと、自分の志望校合格を逃す原因になるかもしれません。情報が流動的な今は、高校1年生の内容も含め、教科書レベルの基礎・基本に取りこぼしがないよう、復習を徹底的に行いましょう。
また、大学受験に関する新たな情報は、これから毎日のように発表されます。文部科学省、大学入試センター、国公立大学、私立大学と、多方面にアンテナを張って情報収集し、分析する必要があります。志望校に合格できるかどうかは、情報収集で決まります。生徒自身や保護者だけでは限界があるので、塾・予備校、高校の進路指導の先生を頼ることが大切です。
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